算数と数学の違い【執筆中】

背景

算数の話では、算数と数学が別物とする主張が度々見かける。
算数は小学校で教えられる数学の初歩であるので、難易度に差はある。
そのため要求事項が包含関係にはあるが、排他関係にはない。

以下に、小学校で算数・中学校で数学を教える上での目標を、
国語的観点で解読する。

2018年＝平成30年9月現在、平成20年に告示された現行要領と平成29年に告示された新要領があり、
小学校の算数と中学校の数学の目標設定を比較できる。

第３節「算数」第１「目標」

算数的活動を通じて、
数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、
日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え、
表現する能力を育てるとともに、
算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気づき、
進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。

第３節「数学」第１「目標」

数学的活動を通じて、
数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め、
数学的な表現や処理の仕方を習得し、
事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに、
数学的活動の楽しさや数学の良さを実感し、
それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。

まずは長文がために、修飾関係が曖昧になっている。
しかし、主従関係では算数と数学が文節単位で対応していて、以下のように解読できる。

⓪─── 　算数的活動を通じて、	⓪─── 　数学的活動を通じて、
①─── 　　　数量や図形についての　　　基礎的・基本的な　　知識及び技能を　身に付け、	①─── 　　　数量や図形などに関する　　　基礎的な概念や原理・法則についての　　理解を　深め、
	②─── 　　　数学的な表現や処理の　　仕方を　習得し、
③─── 　　　　　日常の事象について　　　　見通しを持ち　　　　道筋を立てて考え、　　　表現する　　能力を　育てる	③─── 　　　　　事象を　　　　数理的に考察し　　　表現する　　能力を　高める

──── と共に	──── と共に
④─── 　　算数的活動の楽しさや　　数理的な処理のよさに　気づき、	④─── 　　数学的活動の楽しさや　　数学のよさを　実感し、
⑤─── 　　　進んで　　生活や学習に活用しようとする態度を育てる	⑤─── 　　それらを活用して　　考えたり判断したりしようとする　態度を育てる

小中で共通した文構造は、
⓪の手段を通じて、①②③④⑤の目標を全て満たすように育てること。
以下に、各項目について比較する。

小学校では「算数的活動」
中学校では「数学的活動」
共に未定義な語句であり、一般的な語彙として使われている。

明確な違いが記されてない以上、
単に小学校が算数科だから算数的活動、中学校が数学科だから数学的活動と
字面に合わせて形式的に呼び分けているに過ぎない。

旧制では算数は数学全般を意味する算術と呼ばれていた*1。
対して、中学校の過程は算術・代数・幾何・三角法（解析）と分科されていた。
そのため、小学校の算数は中学校の数学に内包される関係である。

今は教科が圧縮され、中学校では主に代数・幾何・三角法となり、
算術は専ら小学校で教えるようになり、一部の代数・幾何が小学校まで降りている。
以上の経緯から、算数的活動と数学的活動は難易度に差があれど、本質的には同じ手段と言える。

小中とも「数量や図形」についての何かが共通。
「～について」と「～に関する」は同義。

最後の動詞「身に付け」と「深め」は抽象的で、
この抽象レベルではほぼ同義と言える。
結局、意味が持つのは真ん中の目的語になる。

目的語に関して、
小学校では「基礎的・基本的な知識及び技能を」、
中学校では「基礎的な概念や原理・法則についての理解を」