基底成分表記 のバックアップ(No.2) |
基底成分表記ベクトルの成分表記には、列ベクトル線形結合、総和規約があり、この順番で習うのが普通。列ベクトルは基底を省いた表記で、直観的で初心者に易しいため、最初に習う*1。その後、座標変換などを扱うとき、基底を省いた裏目で対応できず、ベクトルの基本表現である線形結合を覚えさせられる。続いて、線形結合は記述量が多くて大変なため、すぐに成分計算の頂点に立つ総和規約を叩き込まれる。しかし、総和規約の計算は添字計算の嵐で、機械的に計算が進むのは良いが、直観的ではなく、基底間の対応と成分間の対応が確認しにくい。 これに対し、猫式ではベクトルをと表記。列ベクトルのように基底と成分の両方を並べ、縦線で分離。 対応する基底と成分の倍積を成分ベクトルと呼ぶと、全成分ベクトルの和がベクトルの値になる。このため、基底と成分の位置さえ対応していれば、のような不規則な並びも許す。 混合基底ストークスの定理を列ベクトルで書くと、前回のベクトル置換積分では列ベクトルで記述して=になるため、基底成分表記で書くと=になる。 これをベクトル演算だけで無理に計算しても失敗する。正しく計算するには、、、を基底とする微分形式を使う必要がある。このため、ベクトル置換積分では2系統の基底が混在している。 猫式では、区別のため、、、を通常基底*2と呼び、、、を微小基底*3と呼ぶ。対応して、、、のように、通常基底のみ、微小基底のみ、両方の基底を含むベクトルをそれぞれ、通常ベクトル、微小ベクトル、混合ベクトルと呼ぶ。 また、混合ベクトルの一般型として、===のように表現する。3つ区切りは基底毎の位取り表記、2つ区切りは基底側に書く基底に対するハイライト表記。 ベクトルの二項演算混合基底の演算もベクトル同様に、通常ベクトル演算、 微小ベクトル演算、混合ベクトル演算と分類できる。実際、ベクトル置換積分で登場するのは3種類の通常ベクトル演算と3種類の微小ベクトル演算のみで、混合ベクトル演算は出番無し。以下に、その6種類の演算を表に纏める。これらは作用する基底にしか影響を与えず、他方を成分扱いするため、ハイライト表記で記述。また、スカラの基底はであることに注意。
一般的に、通常基底も p ベクトルとしてを適用できる。むしろ、通常ベクトルの倍積、外積、内積を先にで纏めてから微分形式に応用するのが歴史に沿った手順である。しかし、この手順ではが通常基底と微分基底の両方に使われるため、混同が起こる。普通は両系統の基底が同時に登場しないよう、上手く問題を避けているが、これがベクトル解析の授業と微分形式の授業の間に要らぬギャップを作ってしまう。 成分基底表記も、元々はこのギャップの橋渡しのために考案した表記で、演算子をに統一しても基底のハイライト表現で十分に区別できる。しかし、3次元を扱う限り、倍積、外積、内積の方が敷居が低いため、今回は混乱を避けるよう一般的に対する演算にを使わないでおく。 成分基底表記によるストークスの定理ストークスの定理は、猫式の基底成分表記とベクトル積分演算子で表記すると次のようになる。=
通常ベクトルの内積による簡略表記上の計算途中で、=とあるが、注釈にもあるように、微小基底があるため、通常基底の内積を取っても3つ成分ベクトルは混ざることはなく、このような割り込みは可能となる。 これを利用して、=と定義すれば、通常ベクトルの内積と基底成分表記が簡単に行き来できる。もともと基底と成分は積で扱われるため、ベクトルの場合に対し内積を取るのは自然の拡張と言える。 これより、微小基底の3種類の演算は次のように書ける。
この簡略表記と猫式のベクトル微分演算子により、ストークスの定理は次のように変形できる。 まとめ・つなぎ今回は、微分形式を経由して、積分公式を導きいた。ベクトル形の積分公式と微分形式を橋渡しするため独自の表記を用いたが、個々の手順自体は合法的。やってることは、=、=によって微小要素を分解してから、単位で消している。 これと同じことを、前回は=、=と理解していた。その結果を作り出すために考えたインチキ規則は、微小基底の二項演算を眺めば、成分側の演算手順から基底側の演算手順への変換規則であるの分かる。の演算では、成分が加算項と減算項の2つに分かれ、基底の並びは必ず加算項と一致する。一方で、通常基底と微傷基底の演算を比較すると、成分側の計算が完全に一致する。このため、通常基底として計算して置き、減算項を抜けば、微小基底の基底側の演算結果が出てくる。 直観的センスとしては、今回は==と回りくどいのに対し、前回は=と直接割ってるため、一枚上手と思う。 微分形式では、1次形式が線積分、2次形式が面積分、3次形式が体積分に対応。3、2、1の次は0。体、面、線の次は点。というわけで、次回、0次形式に対応する「点積分」。 |