偏微分と常微分の違い のバックアップ(No.9) |
偏微分と常微分の違いを問われて、多くの人は「固定する変数の有無」と答える。 これは定義式を眺めば頷ける。 ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、「その違いは関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」というようにも見える。 実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分と常微分は一致する。 この疑問に答えるには、同じ関数に対しを示す必要がある。 偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。 ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。 恐らく、偏微分を急いで学ぶ人にとって、これが同じ関数に対するとが並存する最初の式で、ここから混乱が始まる。 ここまでは多くのテキストで述べられている。しかし、まだとが同時に現れてない。これらを揃えるには、*1のようなを含ませた関数を考える必要がある。 から、の全微分は次のようになる。 次ぎに、、を適応すれば、はの関数に化ける*2。このため、常微分が存在し、次のようになる。 ここで、であるため、次の式が得られる。 がととの影響を受ける限り、どの項も消えずとなる。 EMANの物理では話しが終りであるが、さらに一歩踏み込んで式の意味を読み取ろうとすると、微分表記の限界が見えてくる。 *1
この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話である。偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。
*2 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 の限界条件を少し変えて、について考えてみよう。実ははと無関係で、だけがの関数だった、という話。 すると、は変わらないので、次の全微分は変わらず成立する。 しかし、今度はを代入してもがとの関数にはなるが、だけの関数にはならない。このため、精々次のようにな偏微分しか作れない。 同様に、がととの影響を受ける限り、どの項も消えずとなる。 偏微分の範囲以下では、これまでの問題を直観的に説明してみる。 まず、をに変形する。 すると、自ずとが得られる。 偏微分というのは、の個数を意味する。 にとを代入すると、となる。 全微分は。 常微分は、、に含まれる全てのの個数を表す。 1変数関数が多変数関数の特殊例と見なせば、偏微分も同じ意味で成り立つ。 次ぎに、限界の話ではのみを適応し、作った。 全微分は。 登場した青い偏微分はとの分を数えたである。 対して、赤い偏微分はの分のみを数えたである。 ここで、1つのだけをに変換して、を作っることもできる。 この場合の全微分はになる。 偏微分は変換した1つのとの分を数えたである。 以上を図に纏めると次のようになる: |