フーリエ変換と逆基底と基底積 EditToHeaderToFooter

フーリエ変換は周期現象の記述から制御工学など幅広い分野において役立つ道具である。
関数をベクトルと解釈すれば、フーリエ変換を双対基底の基底変換と整理できる。
問題は、通常表記では逆基底や基底積を簡潔に表記できないため、各分野間でに表記にブレが生じ、
学ぶ側の学習コストを無駄に上げている状態である。

これに対し、凌宮数学ではフーリエ変換を双対の視点で捉え、
逆基底表記および基底積表記を適応して、フーリエ変換の簡潔に表記する。
逆基底表記は双対関係の明記に、基底積表記は多次元フーリエ変換の表記に有効である。

双対としてのフーリエ変換 EditToHeaderToFooter

フーリエ変換*1*2は、一種の双対な基底変換である。
例えば、次のように定義される時間領域と周波数領域でのフーリエ変換は、時間と周波数が双対関係にある。

式1a 正変換: $$ F(\omega) $$$$ = $$$$ \phantom{\ffd{1}{2\pi}} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ f(t) $$$$ e^{-\:i \omega t} $$$$ dt $$
式1b 逆変換: $$ f(t) $$$$ = $$$$ \ffd{1}{2\pi} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ F(\omega) $$$$ e^{\:i \omega t} $$$$ d\omega $$

$$ t $$は時間
$$ \omega $$は角周波数*3

具体的に、時間$$ t $$と周波数$$ \omega $$が互いに逆基底の関係にある基底と見なせば、
関数$$ f(t) $$$$ F(\omega) $$をそれぞれ$$ t $$$$ \omega $$を基底とするベクトル*4で、
$$ f(t) $$$$ F(\omega) $$は同一現象を異なる基底に基づいて記述した一対の関数に見える。

一方で、空間は波数と双対関係になる。
このため、フーリエ変換の空間版は次のように定義される*5

式2a 正変換: $$ F(k) $$$$ = $$$$ \phantom{\ffd{1}{2\pi}} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ f(x) $$$$ e^{-\:i k x} $$$$ dx $$
式2b 逆変換: $$ f(x) $$$$ = $$$$ \ffd{1}{2\pi} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ F(k) $$$$ e^{\:i k x} $$$$ dk $$

$$ x $$は空間
$$ k $$は角波数*6

3次元空間を含む$$ n $$次元空間においてフーリエ変換を定義できる*7

式3a 正変換: $$ F(\:k) $$$$ = $$$$ \phantom{\ffd{1}{2\pi}} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ f(\:x) $$$$ e^{-\:i \:k\sx\:r} $$$$ d\:r $$
式3b 逆変換: $$ f(\:r) $$$$ = $$$$ \ffd{1}{(2\pi)^n} $$$$ \int^\infty_{-\infty}\! $$$$ F(\:k) $$$$ e^{\:i \:k\sx\:r} $$$$ d\:k $$

$$ \:r $$は位置ベクトル
$$ \:k $$は波数ベクトル*8

*1 物理のかぎしっぽ/数学/フーリエ解析/フーリエ変換の第一歩
*2 Wikipedia/フーリエ変換
*3 工学では角周波数$$ \omega $$が多用されるが、$$ 2\pi $$倍違いの周波数$$ \nu $$も用いられる。
*4 関数をベクトルを見なす例: 古典回路屋/フーリエ変換入門/前フリ/関数の基底,関数の内積
*5 EMANの物理学/物理数学/フーリエ解析/フーリエ変換
*6 工学では角波数$$ k $$が多用される上に単に波数と呼ぶ場合が多いが、$$ 2\pi $$倍違いの波数$$ \nu $$も用いられるため、定義に要注意。
*7 中央大学/理工学研究科/物理学専攻/中野研究室/数理解析/2フーリエ変換
*8 波数ベクトル$$ \:k $$自体に$$ 2\pi $$倍違いの2通りの定義があり、定義に要注意。

通常表記の課題1:変数定義の多様性 EditToHeaderToFooter

$$ \omega $$$$ k $$$$ \:k $$の通釈にあるように、
フーリエ変換において逆変換に現れる係数$$ 2\pi $$の扱いが混乱の元となる。

例えば、式1a・式1bの時間に関するフーリエ変換では、角周波数$$ \omega $$$$ 2\pi $$で割った周波数$$ \nu $$を使えば式4a・式4bのようになる。

式4a 正変換: $$ F(\nu) $$$$ = $$$$ \int_{\mathbb{R}^n}\! $$$$ f(t) $$$$ e^{-2\pi\:i \nu t} $$$$ dt $$
式4b 逆変換: $$ f(t) $$$$ = $$$$ \int_{\mathbb{R}^n}\! $$$$ F(\nu) $$$$ e^{\:i 2\pi\nu t} $$$$ d\nu $$

$$ t $$は時間
$$ \nu $$は周波数

$$ \omega $$$$ = $$$$ 2\pi $$$$ \nu $$がために、逆変換に付く係数が隠れる代わりに、
積分変換のカーネル関数$$ e^{\pm\:i\cdots} $$$$ 2\pi $$が現れる。
このため、書く側は都度定義をし、読む側は都度確認する必要がある。

通常表記の課題2:体積分の座標別表記 EditToHeaderToFooter

式3aと式3bの$$ \:r $$$$ \:k $$による積分は、体積分である。
特に$$ \:r $$は位置ベクトルそのものであるため、線積分と非常に紛らわしい。
実際、文脈と積分領域での区別になる。

対して、一般的な3次元の体積分で良く用いられる記法では、$$ \:r $$$$ \:k $$との対応が曖昧になる。
$$ dV_{\:r} $$$$ dV_{\:k} $$と書き分けたどころで、他の次元には適応し難い問題が残る。

$$ G(x) $$$$ = $$$$ \int_{V}\! $$$$ g(\:r) $$$$ dV $$

逆基底によるフーリエ変換の記述 EditToHeaderToFooter

変数定義の多様性を纏めるには、双対関係を記号化すれば良い。
以下に、双対基底を記号化した凌宮数学の逆基底表記をフーリエ変換に適応する。

時間領域におけるフーリエ変換では、
原点から$$ -\infty $$$$ +\infty $$まで任意の時刻までの時間についての積分を行う。
これは、周期を重みとした相加平均と見なせて、時間$$ t $$が実質上周期$$ T $$を意味する。
このため、周波数と周期の関係$$ \nu $$$$ = $$$$ \ffd{1}{T} $$を周波数と時間の関係$$ \nu $$$$ = $$$$ \ffd{1}{t} $$に読み替えられる。

これを式4a・式4bに代入すると、カーネル関数では$$ \nu $$$$ t $$$$ = $$$$ 1 $$となって関数の性質が消滅してしまうため、
同時に基底を基底と分かるように$$ t $$$$ \to $$$$ \:e_t $$$$ \nu $$$$ \to $$$$ \:e_{\nu} $$に書き換えると、式5a・式5bが得られる。

式5a 正変換: $$ F({\frac{1}{\:e_t}}) $$$$ = $$$$ \int_{\mathbb{R}^n}\! $$$$ f(\:e_t) $$$$ e^{-2\pi\:i \frac{1}{\:e_t} \sx t} $$$$ dt $$
式5b 逆変換: $$ f(t) $$$$ = $$$$ \int_{\mathbb{R}^n}\! $$$$ F(\ffd{1}{t}) $$$$ e^{\:i 2\pi\nu t} $$$$ d\nu $$

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