算数教育における加減算の意味分類 のバックアップの現在との差分(No.1) |
導入算数教育において、加算と減算に対して以下のように分類している。
算数教育において、加算と減算に対して以下のように分類しているらしい。
全部で加算5種、減算8種で、全部で合わせて計13種。 最近では、これらの分類を子供が意識する羽目になる事態が発生し、問題視されている。 自分は、合併、増加、求差を知っていたが、他は最近になるまで全く知らなかった。 自分は、合併、増加、求差、求補を知っていたが、他は最近教えていただくまでは聞いたことも無かった。 というわけで、理解を兼ねて再整理してみた。 教える側が内輪で使うはずの分類を教わる側に意識させる是非は抜きにして、 自分がこの分類を見た第一印象: 分類されてないほど直観的に分からない。 というわけで、理解のために再整理をしてみた。 とある加減算の分類とある加減法の分類加減算13種の分類は確かに存在するようだが、 残念ながら、ネット上に無料で公開されている資料では、中々定義を確認できなかった。 このため、資料を付きあわせて、定義を勘ぐるしかない。 個人的に一番分かりやすかったのが、中尾氏が作った「文章題バイキング」にある説明である。 http://nakao.yu-nagi.com/kyouzai-viking-bunsyoudai.htm 例文には限定された題材と記述が用いられているため、注目点や相違点が際立っている。 以下が「文章題バイキング」に登場するパターンである。(ほぼ引用、例文の文体に変更あり)
算|*パターン名|*パターン式*1|* |*例文 |< |< |t=:
解析的分類一般に、加算A+B=Cに関して、Aを被加数、Bを加数、Cを和と呼ぶ。 加算自体を和を求める演算と捕らえることができる。 その場合、減算は被加数または加数を求める加法の逆演算と考えられる*2。
この関係のため、1つの式に意味を付ければ、他の2つの式も自ずと対応した意味が付く。 表1のパターンに対し、意味の対応に着目して整理すると表3が得られる。 ただし、規則性を見出すため、以下の工夫を施した:
直和直和に関して、A、B、Cはそれぞれ集合、、の要素数とすると *3、 集合間に成立すべき立式の前提条件が表4ように纏められる。
排他条件は唯一、加算固有の前提条件である。これが成立しなければ加算を適応できない。 ただ、実際問題、排他条件が明記されない場合も多々ある。 例えば「人は必ず男または女」というような、数学以外の常識ないし他教科の知識が回答者に求められる*4。 包含条件は主に「比較」との区別である。包含関係が無ければ「比較」に分類される。 以上の排他条件と包含条件が合わせば、集合としての直和演算が満たされることになる。 同時条件は主に「変化」との区別である。時間が異なれば「変化」に分類される。 しかし、「合併」という名称は変化を暗示する動作動詞であるため、 系統名としては「求補」が「求部分」とも呼ばれるのを流用し、「合併」を「求全部」と呼ぶことにする。 直和で注目すべき現象は、減算の求被加数と求加数が区別されずに、求部分(求補)として纏められていることである。 このため、求全部(合併)においても、被加数と加数であるAとBが対称的で同一視しなければ、不整合が起きてしまう。 変化変化に関して、変化前をA、変化後をBと置く。 3番目の量はAとBの大小関係に応じて、増加分I(increment)または減少分D(decrement)と置く。 そうすると、変化における立式の前提条件が表5のように纏められる。
排他条件と包含条件は直和と同じである。 直和に対し時間の概念が加わったのが変化(増加、求残、増加前推論、増加数推論、減少前推論、減少数推論)と捕えて良い。 変化が伴う場合、変化の前・後という区別が生じ、前後の大小関係で増加・減少の違いが生じる。 その違いを演算として扱うのが表1や表3の見方である。
表1にあるパターン名でいう「増加」は、その意味から増加した後の量を求める用法であると分かる。 同様に、「求残」とは減少した後の量を求める用法と理解できる。 他の「○○○推論」は、「増加」と「求残」を正思考とする逆思考という考え方に由来する命名と理解できる。 増加・減少の違いを演算で表現する他に、量の方で表現する見方もできる。 それが後に習う負数を用いた用法となる。
変化と増加・減少を纏めると表6のようになる。 ここで、変化分ΔはΔ=IまたはΔ=−Dという関係が成り立つ。 負号の関係上、求減少後と求減少前(求残と減少前推論)の場所を交換し、求減少分(減少数推論)の被減数と減数を逆にした。
表6を見ると、増加・減少での所謂「正思考」とは、増加・減少の統合を見据えているようと思える。 つまり、時間の流れに沿って、変化前と変化分を既知とし、変化後を想像する思考を正としている。 被加数と加数の対称性に関しては、AとΔの意味が異なるため、非対称と言える。 そして、算数においては、変化前+変化分の順番に統一されているように見える。 さらに、物理学など科学分野でも習慣として、この順番で書かれる場合が多い。 比較比較に関して、基準となる量をA、対象となる量をBとする。 小さい量を基準をする正的な差を正差P (positive)、大きい量を基準とする負的な差を負差N (negative)とする。 「大きい」「多い」「高い」で問うのが正差、逆に「小さい」「少ない」「低い」で問うのが負差と考えて良い。 以上のように置くと、比較における立式の前提条件が表7のように纏められる。
排他条件1は直和と同じ条件である。 排他条件2は直和の包含条件の裏返しである。 ただし、比較の特徴である1対1対応を導入して包含条件を作り出し、直和に変換していると考えることができる。 比較では時間の有無を問わない。 時間の概念があっても、1対1対応が見いだせる場合は、比較と見なされる。 ところが、1対1対応により排他条件を包含条件に変換する必要があるため、対応関係が曖昧な場合が考えられる。 比較では差分を求める減算を正思考とされる。これが直和や変化との大きな違いである。 これに関して、1対1対応を具体的に考える際、具体物で表現しうる対象と基準が必要であると考えられる。 特に負差自体が抽象的で、絵で具現化にしにくい。 正差・負差を演算で表現する他に、量の方で表現する見方もできる。 それが後に習う負数を用いた用法となる。
ここで、差分ΔはΔ=PまたはΔ=−Nという関係が成り立つ。 負号の関係上、負差求対象と負差求基準(求小と逆求小)の場所を交換し、負差求差分の被減数と減数を逆にした。
表8を見ると、求大・求小・逆求大・逆求小という分類は、正差・負差の統合を見据えているようと思える。 これで、「大」というのは正差が与えられる問題で、「小」というのは負差が与えられる問題と整理できる。 また、無印の求大・求小は基準が与えられる問題で、「逆」が着くのは対象が与えられる問題と整理できる。 これらに対し、「求差」には正差と負差を区別しない。 正差だけを答えさせる場合*5、 対象と正差の両方を答えさせる場合*6が全て求差に含まれる。 現時点では負差の問答例を確認できてないが、負差は正差より難しいらしい*7。 おまけ:外延量と内包量連続量について、「合併」が成り立つ量を外延量、成り立たない量を「内包量」と呼ぶ分類がある*8。 「合併」に限定している時点で、下記の変化や比較の話では区別できない分類と言える。 例えば、速度は内包量に分類されるが、比較が該当する相対速度の文脈では加減算が成り立つ。 直和条件は問題に依存するため、量だけで外延量と内包量に一般化するのは限界がある。 例えば、核反応有無で質量に関する直和条件が変わるため、一概に質量が外延量と言えなくなる。 このため、外延量と内包量は小学校限りなど条件を絞った使い方をされることに注意する必要がある。 まとめこれまで、算数の界隈で分類される13種の加減算の意味について再整理してみた。 その結果、意味を掘り下げると、3×5種類の用法として整列できた。 意味の命名に関しては、負の概念に基づいた統合を見据えている面も伺えた。 一方で、分類の判定条件として、時間の概念や1対1対応の有無を縦軸に用いた。 これらの判断は主観に基づくため、客観的に判断できないという問題がある。 ここでは、分類の整理を目的とするため、その良し悪しについては議論しない。 最後に、やってみて思ったのだが、これは「意味分類」というより「用法分類」かと。 参考
リンクこの記事は凌宮数学の本記事ではありません。 この記事に関する議論は以下でお願いします。 |