背景 EditToHeaderToFooter

数学には「比」という有用な概念があり、小学校から教えられる。
小学校では2項の比を扱い、割り算を以って比の値を定義する。
具体に、2つの数 $$ a $$$$ b $$ の比を $$ a $$$$ : $$$$ b $$ と書き、その値を $$ a $$$$ \div $$$$ b $$ とする。

他方、比は射影空間の元と一般化され、$$ b $$$$ 0 $$ の場合や、3項以上の連比も扱う。
$$ b $$$$ 0 $$ の場合はゼロ除算になるため、比の値が存在しないか $$ \infty $$ 扱いになる。
連比の場合は、比の値がベクトルとして扱われるし、ゼロ除算も正しく扱えるが一般的ではない。

以下では、比と比の値に関して整理し、3項以上の比の値について考える。

単比(2項の比) EditToHeaderToFooter

EditToHeaderToFooter

直観的な定義は、2つの数$$ a $$$$ b $$について、共通の数$$ k $$を両方に掛けても保つ関係を言う。
具体に、$$ a $$$$ : $$$$ b $$ と表記し、$$ a $$$$ : $$$$ b $$$$ = $$$$ ka $$$$ : $$$$ kb $$ が成り立つ関係を表す。

厳密な定義は、体 $$ K $$ 上の2次元射影空間 $$ KP_2 $$ として、
順序対と同値関係で $$ KP_2 $$$$ = $$$$ (K^2 - \{\:0\}) /:: $$ と定義される。
具体に、

  • $$ a,b $$$$ \in $$$$ K $$ についてのベクトル $$ [a,b] $$$$ \in $$$$ K^2 $$ の内、
  • 零ベクトル $$ \:0 $$$$ = $$$$ [0,0] $$ を除き、
  • $$ \forall k \in K - \{0\} $$$$ :\; $$$$ [a,b] $$$$ :: $$$$ [ka, kb] $$ が同値関係*1*2

一番多用されるのは実数体上の射影空間$$ RP_2 $$
有理数体と複素数体の上に成り立つ射影空間$$ QP_2 $$$$ CP_2 $$も見かける。
例えば、

  • 有理数の比: $$ \ffd23 $$$$ : $$$$ \ffd45 $$
  •  実数の比: $$ 1 : \sqrt2 $$
  • 複素数の比: $$ (1+i) : (1-i) $$

他方、小学校で扱う「有理数」が負の数を含まないため、
有理数が体の要件を満たさず、その比も射影空間を為さない事実には細心の注意が必要である。

*1 $$ :: $$ は比例の古い表記 $$ a $$$$ : $$$$ b $$$$ :: $$$$ c $$$$ : $$$$ d $$ から取っている。
*2 この同値関係は習慣的に$$ \sim $$で表記される場合が多い。

比の値 EditToHeaderToFooter

単比$$ a $$$$ : $$$$ b $$の値は、$$ a / b $$ と定義される場合が多い。
というのも、歴史的に除算と比の区別が無く、今でもフランスやドイツでは$$ a $$$$ : $$$$ b $$で割算を表す*3
日本では比と割算を表記上では区別するが、比の値で繋がっている*4*5

除算に関して、除数が$$ 0 $$の場合は未定義

*3 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=62419?site=nli
*4 「比の値」が学習指導要領で要求されている用語
  ref: https://www.nier.go.jp/guideline/h28e/chap2-3.htm

*5 昔は加比の理など比ならではの演算も扱うが、今は比の値の四則演算でできる範囲に留まっている。
    数学 一覧 検索 最新 バックアップ リンク元   ヘルプ   最終更新のRSS