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* 奇妙な式 [#w0d4317b]
;,一般に、''正の整数''範囲内では、平方根は掛け算に対して分配則が成り立つ。
;,一般に、''正の整数''範囲内では、平方根は乗法に対して分配則が成り立つ。
#ceq(e)
    $$ \sqrt{a \times b} $ = $ \sqrt a $ \times $ \sqrt b $$
#ceq(d)
具体的に、
#ceq(e)
    $$ 6 $ = $ \sqrt{36} $ = $ \sqrt{4 \times 9} $ = $ \sqrt 4 $ \times $ \sqrt 9 $ = $ 2 $ \times $ 3 $$
#ceq(d)

;,$$ a > 0 $$かつ$$ b > 0 $$の成立条件を無視すると次の奇妙な式を導いてしまう。
#ceq(e)
    $$ 6 $ = $ \sqrt{36} $ = $ \sqrt{(-4)\times(-9)} $ =\!\!\!\!? $ \sqrt{-4} $ \times $ \sqrt{-9} $ = $ 2\:i $ \times $ 3\:i $ = $ -6 $$
#ceq(d)

;,もちろん$$ 6 $ \neq $ -6 $$であるので、この式は間違っている。
;,実際、間違っているのは$$ =\!\!\!\!? $$の等号で左右の符号が変わるので破綻している。
;,これは単位量で考えると分かり易い:
#ceq(e)
    $$ 1 $ = $ \sqrt{1} $ = $ \sqrt{(-1)\times(-1)} $ =\!\!\!\!? $ \sqrt{-1} $ \times $ \sqrt{-1} $ = $ \:i $ \times $ \:i $ = $ -1 $$
#ceq(d)

;,奇妙な式が間違っていることは分かった。
;,しかし、ここで「分配則が成立しない」でお終いにするのは勿体ない。
;,以下のように考えると、分配則の不成立は人為的な選択による結果と言える。
;,すなわち、掛算に対する平方根の分配法則は複素数範囲において成立する。
;,以下では、その原因について考察する。

* 平方根の人為的選択 [#mccaf045]
;,平方根の概念は、自乗の逆演算である。
;,具体的に、正の実数の範囲では、任意の正の実数$$ a $$に対し、$$ a $$の平方根$$ x $$は$$ x^2 $ = $ a $$を満たす正の実数である。
;,一般に、$$ a $$の平方根を$$ \sqrt a $$で表記する。
* 原因:平方根の人為的選択 [#mccaf045]
;,一般に、平方根と言えば、平方の逆演算を意味する概念である。
;,すなわち、任意の実数$$ a $$の平方根と言えば、$$ x^2 $ = $ a $$を満たす$$ x $$を意味する。

;,問題は、$$ x $$を実数全体にまで範囲を広げた場合、$$ a $ = $ 0 $$の時を除き、
;,$$ x^2 $ = $ a $$を満たす$$ x $$が常に2つ存在する。
;,その片方を$$ x_1 $$、他方を$$ x_2 $$と置くと、$$ x_2 $ = $ - $ x_1 $$の関係にある。
;,ところが、平方根の表記に用いられる根号は、''正の平方根''のみを表すのが習わしである。
;,例えば、$$ 36 $$の平方根は$$ 6 $$と$$ -6 $$の2つが存在するが、
;,$$ \sqrt{36} $$は$$ 6 $$、$$ -\sqrt{36} $$は$$ -6 $$を意味し、$$ \pm\sqrt{36} $$で両方の平方根を表す。

//;,これは虚数になっても同じである。
//;,虚数単位$$ \:i $$を導入すれば、$$ \sqrt{-36} $$は$$ 6\:i $$と書けるが、$$ -6\:i $$も$$ -36 $$の平方根になる。
//#ceq(e)
//    ∵ $$ (-6\:i)^2 $ = $ (-1)^2 $ \times $ 6^2 $ \times $ \:i^2 $ = $ 1 $ \times $ 36 $ \times $ (-1) $ = $ -36 $$
//#ceq(d)
//;,$$ 6\:i $$も$$ -6\:i $$も虚数であるために正・負で区別できないが、
//;,どちらも2つある平方根の片方だけを選択しているのは要注意である。

;,以上の視点で$$ \sqrt{(-4)\times(-9)} $ \neq $ \sqrt{-4} $ \times $ \sqrt{-9} $$を眺めると、
;,左辺は$$ 36 $$の平方根の内、正の平方根を選択していると解釈でき、
;,右辺は虚数が現れるもが、結果的に負の平方根を選択していると解釈できる。
;,もし、左辺も負の平方根を選択していれば、分配則は成立すると見なせる:
#ceq(e)
    $$ x_1^2 $ = $ a $$  $$ \Longrightarrow $$  $$ (-x_1)^2 = (-1)^2 $ \times $ x_1^2 $ = $ 1 \times $ a $ = $ a $$
    $$ -\sqrt{(-4)\times(-9)} $ = $ \sqrt{-4} $ \times $ \sqrt{-9} $$
#ceq(d)

;,注意すべきは、形式的に左辺に符号が付くから分配則が成立しないように見えるが、
;,それは「正の平方根」が負の数の乗法に対して分配則が破綻するのであって、
;,平方根で見た場合、$$ -\sqrt{(-4)\times(-9)} $$も$$ \sqrt{-4} $$も、正負・実虚の別に関係無く、平方根である。

;,そこで、歴史的理由により2つの人為的選択が行われてきた。
;,任意の正の実数$$ a $$に関して、$$ \sqrt{a} $$も正の実数である。すなわち$$ \sqrt{a} $ > $ 0 $$。

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