偏微分と常微分の違い のバックアップ(No.13) |
偏微分と常微分の違いを問われて、多くの人は「固定する変数の有無」と答える。 これは定義式を眺めば頷ける。 ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、「その違いは関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」というようにも見える。 実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分と常微分は一致する。 この疑問に答えるには、同じ関数に対しを示す必要がある。 偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。 ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。 恐らく、偏微分を急いで学ぶ人にとって、これが同じ関数に対するとが並存する最初の式で、ここから混乱が始まる。 ここまでは多くのテキストで述べられている。しかし、まだとが同時に現れてない。これらを揃えるには、*1のようなを含ませた関数を考える必要がある。 から、の全微分は次のようになる。 次ぎに、、を適応すれば、はの関数に化ける*2。このため、常微分が存在し、式の両辺をで割った形となる。 がととの影響を受ける限り、どの項も消えずとなる。 EMANの物理では常微分と偏微分が異なる結論を導きだして終了となるが、さらに一歩踏み込んで式の意味を読み取ろうとすると、微分表記の限界が見えてくる。 *1
この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話である。偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。また、この説明は、私が直感的に納得できた唯一の説明でもある。
*2 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 の限界条件を少し変えて、について考えてみよう。実ははと無関係で、だけがの関数だった、という話。 すると、であることに変わらないため、次の全微分も変わない。 しかし、今度はを代入してもだけの関数にはならない。は精々との関数としか言えないため、次の式が成り立つ。 問題は、青と赤の偏微分は別物で、両式を比較すると以下の関係が得られる。 それも、がの影響を、がの影響を受ける限り、どの項も消えずとなってしまう。 直感的な説明:偏微分の範囲以下では、を用いて、これまでの問題を直観的に纏める。 まず、を次のように展開できる。
これに対し、全微分は次のように作れる。
から、赤い偏微分が得られる。 同様に、にとを代入すると、を得る。 全微分は。 常微分は「緑、青、赤を合わせたを個数」を表す。 対して、赤い偏微分は変わらず、赤いのみを数えたである。 一見良さそうに見えるが、を見る限り、 次ぎに、限界の話ではのみを適応し、作った。 全微分は。 登場した青い偏微分はとの分を数えたである。 対して、赤い偏微分はの分のみを数えたである。 さらに、際どく「1つのだけをに変換」して、を作ることもできる。この場合、全微分は、 1つのとを数えた紫の偏微分と、 赤いのみを数えた赤いが考えられる。 以上を図に纏めると次のようになる: 以上から次の結論が得られる:
このように、、、の間に関係式を持てば、を変えずにの数を任意に増減できてしまう。その結果、は何個のを数えても良く、任意の値を取れることになる。 1変数関数が多変数関数の特殊例と見なせば、偏微分も同じ意味で成り立つ。 まとめ・つなぎ以上から、同じ関数の常微分と偏微分が異なる値を表す場合はあるが、その場合に次のことも言える:
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