偏微分と常微分の違い のバックアップ(No.14) |
偏微分と常微分の違いを問われて、多くの人は「固定する変数の有無」と答える。 これは定義式を眺めば頷ける。 ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、「その違いは関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」ようにも見える。 実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分は常微分と一致する。 この疑問に答えるには、同一関数に対しを示す必要がある。 偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。 ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。 ここまでは多くのテキストで述べられている。これを利用し、とを揃えるには、*2のようなを含む関数を考える必要がある。 まず、から、の全微分は次のよう書ける。 次ぎに、、を代入すれば、はの関数に化ける*3。このため、常微分が存在し、式の両辺をで割った形となる。 がととの影響を受ける限り、どの項も消えずとなる。 しかし、これは一見良さそうに見えるが、式の意味を読み取ろうとすると偏微分の限界が見えてくる*4。 例えば、がに関する1変数関数に化けられるならば、冒頭で述べたように1変数関数を多変数関数の特例と見なせて、常微分と等価な青い偏微分が存在する。
ここから、という矛盾した結論が得られる。 *1
偏微分を駆け足で学ぶ人には、恐らくこれが同一関数に対してとが並存する最初の式で、混乱が始まりである。
*2 この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話である。偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。 *3 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 *4 注意:問題は偏微分の方である。EMANの物理の説明自体は正しい。その説明は私が納得できた唯一の説明でもある。むしろ、偏微分の欠点を上手く隠した分かりやすい説明である。 中途半端な条件を少し変えて、中途半端なについて考えてみよう。「と書いていたが、実ははを含んで無く、だけがを含んでいた」という話。 すると、であることに変わらないため、次の全微分は変わない。 しかし、今度はを代入してもだけの関数にはならない。代わりにはとに関する2変数関数になるため、次の全微分が成り立つ。 問題は、この紫の偏微分は赤い偏微分と別物で、両式を比較すると以下の関係が得られる。
それも、がの影響を、がの影響を受ける限り、どの項も消えずの関係を持つ。 直感的な説明:偏微分の範囲以下では、を用いて、これまでの問題を直観的に纏める。 まず、を次のように展開できる。
これに対し、全微分は次のように作れる。 から、赤い偏微分が得られる。 同様に、にとを代入すると、を得る。 全微分は。 常微分は「緑、青、赤を合わせたを個数」を表す。 対して、赤い偏微分は変わらず、赤いのみを数えたである。 一見良さそうに見えるが、を見る限り、 次ぎに、限界の話ではのみを代入し、作った。 全微分は。 登場した青い偏微分はとの分を数えたである。 対して、赤い偏微分はの分のみを数えたである。 さらに、際どく「1つのだけをに変換」して、を作ることもできる。この場合、全微分は、 1つのとを数えた紫の偏微分と、 赤いのみを数えた赤いが考えられる。 以上を図に纏めると次のようになる: 以上から次の結論が得られる:
このように、、、の間に関係式を持てば、を変えずにの数を任意に増減できてしまう。その結果、は何個のを数えても良く、任意の値を取れることになる。 1変数関数が多変数関数の特殊例と見なせば、偏微分も同じ意味で成り立つ。 まとめ・つなぎ以上から、同じ関数の常微分と偏微分が異なる値を表す場合はあるが、その場合に次のことも言える:
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