偏微分と常微分の違い のバックアップ(No.16) |
偏微分と常微分の違いを問われて、多くの人は「固定する変数の有無」と答える。 これは定義式を眺めば頷ける。 ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、「その違いは関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」ようにも見える。 実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分は常微分と一致する。 この疑問に答えるには、同一関数に対しを示す必要がある。 偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。 ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。 ここまでは多くのテキストで述べられている。これを利用し、とを揃えるには、*2のようなを含む関数を考える必要がある。 まず、から、の全微分は次のよう書ける。 次ぎに、、を代入すれば、はの関数に化ける*3。このため、常微分が存在し、式の両辺をで割ることでを作り出せる。 がととの影響を受ける限り、どの項も消えず、「偏微分と常微分は違う」という結論に至る。 *1
偏微分を駆け足で学ぶ人には、恐らくこれが同一関数に対してとが並存する最初の式で、混乱が始まりである。
*2 この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話である。偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。 *3 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 偏微分と偏微分の違い偏微分と常微分の違いは前節の通りである。しかし、これは一見良さそうだが、式の意味を読み取ろうとすると偏微分の矛盾が見えてくる*4。 例えば、がに関する1変数関数に化けられるなら、冒頭で述べたように1変数関数を多変数関数の特例と見なせて、常微分と等価な青い偏微分が存在することになる。
これに、前節で得たを合わせると、次の矛盾が得られる。 中途半端な条件を少し変えて、中途半端なについて考えてみよう。「と書いていたが、実はにが含まれて無く、だけにが含まれていた」という話。 すると、であることに変わらないため、次の全微分も変わらず成立する。 しかし、今度はにを代入してもだけの関数にはならない。代わりにはとに関する2変数関数になるため、次の全微分が成り立つ。 問題は、この紫の偏微分は赤い偏微分と別物で、両式を比較すると以下の関係が得られる。
それも、がの影響を、がの影響を受ける限り、どの項も消えずの関係を持つ。 同様に代入の加減をすれば、赤、紫、青以外にも、色んな偏微分を作ることができる。 直感的な説明:偏微分の数え方以下では、偏微分の矛盾をという具体例を用いて、直観的に纏めてみる。 まず、にとを少しずつ代入すると次の変形が得られる。
それぞれの式から次の偏微分が考えられる:
式変形によりの数を自由に設定できる。 これが凌宮数学の視点から見た偏微分と常微分である。 まとめ・つなぎポイントを纏めると、次の3点となる:
したがって、偏微分と常微分の表記を統合するには、まず色々ある偏微分を正確に書き分ける必要があると言える。そうすれば、自ずと偏微分と常微分を統一した記号で書き分けられることになる。 |