偏微分と常微分の違い のバックアップ(No.18) |
偏微分と常微分の違いは、定義式から「固定する変数の有無」というのがお墨付きの答えである。 ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、その違いは「関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」ようにも見える。実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分は常微分と一致する。 このため、偏微分と常微分の違いを説明するには、同一の多変数関数に対しを示す必要がある。 偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。 ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。 ここまでは多くのテキストで述べられている。これを利用し、とを揃えるには、*2のようなを含む関数を考える必要がある。 まず、から、の全微分は次のよう書ける。 次ぎに、、を代入すれば、はの関数に化ける*3。このため、常微分が存在し、式の両辺をで割ることでを作り出せる。 がととの影響を受ける限り、どの項も消えず、「偏微分と常微分は違う」という結論に至る。 *1
偏微分を駆け足で学ぶ人には、恐らくこれが同一の関数に対してとが並存する最初の式で、混乱が始まりである。
*2 この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話で、偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。 *3 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 偏微分と偏微分の違い偏微分と常微分の違いは前節の通りである。しかし、これは一見良さそうだが、式の意味を読み取ろうとすると偏微分の矛盾が見えてくる*4。 例えば、がに関する1変数関数に化けられるなら、冒頭で述べたように1変数関数を多変数関数の特例と見なせて、常微分と等価な青い偏微分が存在することになる。
これに、前節で得たを合わせると、次の矛盾が得られる。 色んな条件を少し変えて、中途半端なについて考えてみよう。「と書いていたが、実はにが含まれて無く、だけにが含まれていた」という話。 すると、であることに変わらないため、次の全微分も変わらず成立する。 しかし、今度はにを代入してもだけの関数にはならない。代わりにはとに関する2変数関数になるため、次の全微分が成り立つ。 問題は、この紫の偏微分は赤い偏微分と別物で、両式を比較すると以下の関係が得られる。
それも、がの影響を、がの影響を受ける限り、どの項も消えずの関係を持つ。 同様に代入の加減をすれば、赤、紫、青以外にも、色んな偏微分を作ることができる。 直感的な説明:偏微分の数え方以下では、偏微分の矛盾をという具体例を用いて、直観的に纏めてみる。 まず、にとを少しずつ代入すると次の変形が得られる。
それぞれの式から次の偏微分が考えられる:
その気になれば無数の偏微分を作れる。例えば、こんな色のも作れる。
纏めると:
これが凌宮数学の視点から見た偏微分と常微分である。 まとめ・つなぎ多くの場合、赤い偏微分と青い偏微分しか使われないため、とで区別できる。ただ、他の偏微分に気づいた人から混乱が始まる。 この混乱を無くすには、色んな偏微分を厳密に書き分け、正しく整理する必要がある。そうすれば、自ずと偏微分と常微分を一貫した表記で書けるようになる。また、書き表せないものを書けるようになったとき、新しい発想ができるようになるかもしれない。 実際、熱力学では赤と青の他、紫に相当する偏微分も登場する。そのため、よりも強力な偏微分表記が用いられている。それでも全ての偏微分を書き分けるには不十分であるが、次回は、その強力な表記を通じて偏微分の意味について確認しておく。 |