偏微分と常微分の違い のバックアップの現在との差分(No.6) |
偏微分と常微分の違いを問われて、多くの人は「固定する変数の有無」と答える。 これは定義式を眺めば頷ける。 偏微分と常微分の違いは、定義式から「固定する変数の有無」というのがお墨付きの答えである。
ここで言う「固定する変数」とは偏微分の方に現れる赤い「」である。 しかし、「その違いは関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」というようにも見える。実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分と常微分は一致する。 しかし、その違いは「関数の違いで、微分操作自体は青い部分のまま変わらない」ようにも見える。実際、1変数関数は2変数関数の特殊例と見なすことができ、その場合の偏微分は常微分と一致する。
偏微分と常微分の違い準備として、2変数関数について、次のように定義される全微分について考える。
ここで、、であれば、と、の関数に書き換えられる。このため、によるの常微分が存在し、次のようになる。
*1
偏微分を駆け足で学ぶ人には、恐らくこれが同一の関数に対してとが並存する最初の式で、混乱が始まりである。
*2 この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話である。偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。 *3 この関数は、EMANの物理学/解析力学/全微分で偏微分と常微分の違いを説明するのに用いられている。ページ自体は全微分の話で、偏微分と常微分の違いはその一番最後の節で述べられている。 *4 この時点で、は、とに関する2変数関数でありながら、に関する1変数関数にもなっている。変数の数が絶対的でなくなっている点に注意。 の限界偏微分と偏微分の違い条件を少し変えて、について考えてみよう。実ははと無関係で、だけがの関数だった、という話。偏微分と常微分の違いは前節の通りである。しかし、これは一見良さそうだが、式の意味を読み取ろうとすると偏微分の矛盾が見えてくる*5。すると、は変わらないので、次の全微分は変わらず成立する。例えば、がに関する1変数関数に化けられるなら、冒頭で述べたように1変数関数を多変数関数の特例と見なせて、常微分と等価な青い偏微分が存在することになる。
色んな条件を少し変えて、中途半端なについて考えてみよう。「と書いていたが、実はにが含まれて無く、だけにが含まれていた」という話。すると、であることに変わらないため、次の全微分も変わらず成立する。
偏微分の範囲直感的な説明:偏微分の数え方以下では、これまでの問題を直観的に説明してみる。以下では、偏微分の矛盾をという具体例を用いて、直観的に纏めてみる。まず、をに変形する。 すると、自ずとが得られる。 偏微分というのは、の個数を意味する。 まず、にとを少しずつ代入すると次の変形が得られる。
にとを代入すると、となる。 全微分は。 常微分は全てのの個数を表す。 それぞれの式から次の偏微分が考えられる:
次ぎに、限界その1ではのみを適応して、となる。 全微分は。 登場した青い偏微分はとの分を数えたである。 対して、赤い偏微分はの分のみを数えたである。 その気になれば無数の偏微分を作れる。例えば、こんな色のも作れる。
続けて、限界その2では1つのだけをに変換してを作った。 全微分は。 登場した偏微分は変換されたとの分を数えたである。 纏めると:
まとめ・つなぎ多くの場合、赤い偏微分と青い偏微分しか使われないため、とで区別できる。ただ、他の偏微分に気づいた人から混乱が始まる。この混乱を無くすには、色んな偏微分を厳密に書き分け、正しく整理する必要がある。そうすれば、自ずと偏微分と常微分を一貫した表記で書けるようになる。また、書き表せないものを書けるようになったとき、新しい発想ができるようになるかもしれない。実際、熱力学では赤と青の他、紫に相当する偏微分も登場する。そのため、よりも強力な偏微分表記が用いられている。それでも全ての偏微分を書き分けるには不十分であるが、次回は、その強力な表記を通じて偏微分の意味について確認しておく。 |