• 2013.0101.0329 暫定原稿

    $$ F $$をベクトル$$ x $$で編微分

一般に、1変数関数$$ F(x) $$の微分と言えば$$ \ddd{F}{x} $$である。

対して、多変数関数$$ G(x,y) $$になると、偏微分$$ \ppd{G}{x} $$$$ \ppd{G}{y} $$、そして全微分$$ dG $$が登場する*1

多変数関数の各種微分に対し、1変数の微分を特に常微分と呼ぶ。

問題は、この$$ d $$$$ \partial $$の使い分けが微分を難しくする原因の一つである。

教科書的に纏めると、次のようになる:

名称被微分関数微分表記定義例
常微分1変数:$$ F(x) $$$$ \ddd{F}{x} $$$$ \lim_{\varDelta x \to 0} \ffd{F(x + \varDelta x) - F(x)}{\varDelta x} $$
偏微分2変数:$$ F(x,y) $$$$ \ppd{F}{x} $$$$ \lim_{\varDelta x \to 0} \ffd{F(x + \varDelta x, y) - F(x, y)}{\varDelta x} $$
全微分任意変数:$$ F $$$$ dF $$$$ \ppd{F}{x} dx + \ppd{F}{y} dy $$

定義からも、偏微分が常微分の拡張で、全微分は別の概念ということが分かる。

また、1変数を2変数の特殊例と見なした場合、1変数のときに$$ \ddd{F}{x} $$$$ = $$$$ \ppd{F}{x} $$が成り立つ。

このため、常微分を$$ \partial $$で書くと恐らく注意される程度で済むだろう。

しかし、偏微分に$$ d $$、全微分に$$ \partial $$を使うのは問答無用のバツになる。

自分の経験上、偏微分を始めたばかりでは「多変数は$$ \partial $$を使え」と覚えば済むから特に問題ない。

大抵は全微分を学び、次の$$ F(x(t), y(t)) $$の連鎖則で混乱が始まる。

$$ \ddd{F}{t} $$$$ = $$$$ \ppd{F}{x} $$$$ \ddd{x}{t} $$$$ + $$$$ \ppd{F}{y} $$$$ \ddd{y}{t} $$

この式がエグい所は2つ。

一つは、$$ dF $$$$ \partial F $$$$ dx $$$$ \partial x $$$$ dy $$$$ \partial y $$が出揃うところである。

もう一つは、$$ \ddd{F}{t} $$$$ \ddd{x}{t} $$$$ \ddd{y}{t} $$は全微分ではなく常微分にしか見えないところである*2

このため、「多変数は$$ \partial $$を使え」が一気に通用しなくなって、混乱が起きる。

*1 ベクトル解析では勾配$$ \:\nabla G $$も登場するが、実質上偏微分の拡張のため、偏微分と全微分ほど紛らわしくないため、ここでは考えない。
*2 実際、$$ \ddd{x}{t} $$$$ \ddd{y}{t} $$は正真正銘の1変数関数の常微分ではあるが。
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