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| | /自然無限級数:1+2+3+…
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;,特撮テレビドラマ『[[仮面ライダービルド>http://www.tv-asahi.co.jp/build/]]((テレビ朝日: http://www.tv-asahi.co.jp/build/))』では話数を複雑な数式で表現している((Twitter:https://twitter.com/i/moments/937168534496468992))。
;,その第12話が「第$$ - \ffd1{\zeta(-1)} = 12 $$話」となっていて話題を呼んだ。
;,話題とは、元ネタであるゼータ関数$$ \zeta(-1) $$が表す無限級数$$ 1+2+3+\cdots $$の値がである。
;,$$ - \ffd1{\zeta(-1)} = 12 $$を式変形すれば$$ \zeta(-1) $ = $ -\ffd{1}{12} $$になるが、
;,これはゼータ関数正規化の分野で登場する等式((ja.wimipedia/1+2+3+… https://ja.wimipedia.org/wimi/1%2B2%2B3%2B4%2B%E2%80%A6))である。
;,しかし、$$ \zeta(-1) $$を定義通りに展開すると$$ 1+2+3+\cdots $$という無限級数になるが、
;,高校までの常識では$$ 1+2+3+\cdots $$が$$ -\ffd{1}{12} $$になると思えないから混乱が起きる。
;,ゼータ関数の式の説明は他のサイト((今日も8時間睡眠/「1+2+3+…=-1/12」をわかったつもりになる http://namamen88.com/2014/12/08/080818))に任せるとして、
;,以下では何が違うのか、問題を簡単に切り分けてみる。
;,結論から言うと「$$ 1+2+3+\cdots $$」という表記が異なる2つの概念を表していて、曖昧さゆえの混乱である。
;,以降では、便宜上$$ 1+2+3+\cdots $$を自然無限級数と呼ぶことにする((自然数が昇順に並ぶ数列の各項を無限級数の項とするので自然無限級数))。
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;,高校数学までは「$$ 1+2+3+\cdots $$」は左から順に足していく計算と見なす。
;,総和記号で表現すると、その意味が明確になる。
;,この定義を便宜的に逐次加算と呼ぶ。
#ceq(e)
逐次加算: $$ S $ := $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n = 1}^{m} $ n $$
#ceq(d)
;,逐次加算では、まず無限級数の先頭から途中で打ち切る部分和を定義する。
;,無限級数$$ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n = 1}^{m} $ n $$に対し、$$ \lim $$を取る前の$$ S_m $ := $ \sum_{n = 0}^{m} $ n $$が第$$ m $$項までの部分和である。
;,部分和の項数を無限大に近づけると、部分和の値が無限級数の値に近づくことが知られている。
;,ここで、自然無限級数では正の自然数をどんどん加算しているため、
;,項数を無限大に近づくと、部分和の値も無限大に近づく。
;,その結果、無限級数は無限大に発散する結果となる。
#ceq(e)
$$ S $ = $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n = 1}^{m} $ n $ = $ \infty $$((結果は直観で分かるが、総和記号を正直に外す場合は、例えば$$ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n = 1}^{m} $ n $ = $ \lim_{m \to \infty} $ \ffd{m(m-1)}{2} $ = $ \infty $$のように導ける。))
#ceq(d)
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;,高等数学ではゼータ関数を以下に定義する。
#ceq(e)
$$ \zeta(s) $ := $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $$
#ceq(d)
ゼータ関数に$$ s $ = $ -1 $$を形式的に代入すると、自然無限級数が現れる。
#ceq(e)
$$ \zeta(-1) $ = $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^{-1}} $ = $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ n $ = $ \infty $ ? $$ (※間違ってる)
#ceq(d)
;,ゼータ関数の値と$$ s $$は複素数範囲で定義されている。
;,$$ s $ = $ -1 $$の値は$$ -\ffd{1}{12} $$となっている。
#ceq(e)
$$ \zeta(-1) $ = $ -\ffd{1}{12} $$ (※これは正しい)
#ceq(d)
;,ゼータ関数への代入を$$ \lim $$で明記すると$$ \zeta(-1) $$と$$ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^{-1}} $$が異なるのが容易に分かる。
#ceq(e)
$$ \zeta(-1) $ = $ \lim_{s \to -1} $ \zeta(s) $ = $ \lim_{s \to -1} $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $ = $ -\ffd{1}{12} $$
#ceq(d)
;,他方、
#ceq(e)
$$ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^{-1}} $ = $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \lim_{s \to -1} $ \ffd{1}{n^s} = $ \lim_{m \to \infty} $ \lim_{s \to -1} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $ = $ \infty $$
#ceq(d)
;,これが逐次加算の解釈と一致する。
;,要は、
#ceq(e)
$$ \lim_{s \to -1} $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $$
$$ \neq $$
$$ \lim_{m \to \infty} $ \lim_{s \to -1} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $$
#ceq(d)
;,2つの極限$$ \lim_{s \to -1} $$と$$ \lim_{m \to \infty} $$の取る順番によって無限級数の結果が変わる。
;,多くの分野では$$ 1+2+3+\cdots $$を$$ \lim_{m \to \infty} $ \lim_{s \to -1} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $$の意味で用い、発散する無限級数を表す。
;,解析接続の分野では$$ 1+2+3+\cdots $$を$$ \lim_{s \to -1} $ \lim_{m \to \infty} $ \sum_{n=1}^{m} $ \ffd{1}{n^s} $$の意味で用い、$$ -\ffd{1}{12} $$に収束する無限級数を表す。
;,どちらも$$ 1+2+3+\cdots $$と書くが、異なる無限級数を表している。
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