オイラーの連鎖式 のバックアップの現在との差分(No.14) |
凌宮読取術:凌宮読解術: ⇒任意の2変数関数について、オイラーの連鎖式と呼ばれる恒等式が成立する *1。*2。
問題は、などを約分してにしたどころで、そんな期待を裏切るである。 問題は、などを形式的に約分してと書きたいどころ、期待を裏切るである。 一般的な証明*3*4は式を弄り回したら合ったレベルで、とても直感的とは言えない。 *5 *6 は式を色々弄ったら合ったようなもので、とても直観的とは言えない。 しかし、それだけで「偏微分は約分できない」と諦めるのは、まだ早計である。 が約分できる結果だけ見て、を約分するから上手く行かない。 が約分できる原因を考えば、を符号込みで約分できるようになる。 しかし、それだけで「偏微分は約分できない」と諦めるのは、まだ勿体ない。 が約分できる結果だけ見てをそのまま消すから、計算が上手く行かない。 が約分できる仕組みを見てを正しく読み替えると、約分も負号も直観的に考えられる。 凌宮数学では、オイラーの連鎖式は以下のように読み替える: 凌宮数学では、オイラーの連鎖式は以下のように読み替えてから約分する:
*1
熱力学や熱化学の分野では圧力、体積、温度を結ぶマクスウェルの規則の形で学ぶことになる。
*2 熱力学や熱化学では結ぶマクスウェルの規則の形で学ぶことになる。 *3 参考:熱学の基礎/微分公式/偏微分 *4 参考:EMANの物理学/熱力学/状態方程式の微分形 *5 参考:熱学の基礎/微分公式/偏微分 *6 参考:EMANの物理学/熱力学/状態方程式の微分形 基礎知識陰微分と陽微分オイラーの連鎖式の符号は、「」を直感的に捉えられれば、ことが済む。 その原因を探ると、陽関数と陰関数に辿り着く。 このため、凌宮数学では、陽微分と陰微分の概念を作り出し、微分の符号を直感的に扱う。 陽関数と陰関数微分には「関数を1次近似した近似式の係数」すなわち微分係数という解釈がある。 例えば、関数は1次式と近似できるが、 変数との係数とが微分係数で、それぞれがの偏微分、となる。一般に、3つの変数、、の関係を記述するには、以下の2つの書き方が可能である。
一方で、からやにつて解いた一次式からも微分係数が得られる。 例えば、について解いた式からは、、が得られる。 同様に、について解いた式からは、、が得られる。 陽関数では、変数を独立変数と呼ばれる既知の変数と従属変数と呼ばれる未知の変数に分け、 変数間にある関係の他に、独立変数から従属変数を求める手段も同時に与える。 表記としては、独立変数はのように括弧で括り、従属変数はは関数値と等号で結ぶ。
陰関数では、全ての変数を平等に扱い、それらの間にある関係を与える。 表記としては、変数は全て括弧で括り、関数値は定数と等号で結ぶ。 変数を求めるには、具体的に陽関数の形に変形する必要があるため、陽関数より抽象度が高い。 ここで重要なのは、移項で「」が発生することである。 その移項は独立変数について解くためで、移項で「」付くのは別の独立変数の項に限る。 このため、分母・分子とも独立変数の微分を見抜けば、「」を正しく書ける。 任意の2変数の陽関数に対し、 と独立変数を移項することで等価の陰関数を簡単に作り出せる。 結論から言うと、この移項で発生する「」がオイラーの連鎖式に現れる「」に繋がる。 そこで、凌宮数学では以下のように陰微分と陽微分を定義する。
微分係数としての微分すると、関数の1次近似式の係数で微分の値を表すとき、微分の陰陽で「」の有無を判定できる。
微分の捉え方の一つに、微分係数という考え方がある。 それは、関数の1次近似を考える際、得られる1次式の係数を微分と定義する方法である。
例えば、陽関数の例では、やが陽微分になる。 一方で、陰関数の例では、やが陰微分になる。 ただし、陽関数でも、はを陰関数扱い *8にした陰微分になる。 対して、陰関数には独立変数が存在しないため、陰関数の陽微分は存在しない。 2変数関数は一般的にで一次近似できる。 ここで、とはそれぞれとに対応する係数で、は定数項である。 そして、を、をと書くのが微分係数としての微分である。 陽関数の文脈では、の一次近似がになり、 微分係数をのように関数値の代わりに従属変数で書くことができる。 このため、陽微分は微分係数ということになる。 一方で、陰微分はを変形して求める必要がある。 例えば、はにしてから、 の係数を取ってと求まる。 このように、陰微分は2つの微分係数の割り算に「」が付いた値になる。 重要なので、強調しながら纏めると、 陽微分は高校からならう微分係数そのもので、いわゆる通常の微分である。 陰微分は大学で黙って登場するが、通常の微分と違って、係数で書くと「」が付く性質を持つ *9。 *7
逆に全てに統一するのは、同じく歴史的理由により簡単には行かない。
*8 偏微分の定義からを定数と見なすため、陽関数でも陰関数と同じになる。 *9 この「」の付く・付かない性質が、陰微分・陽微分と名付けた本来の理由である。 陰関数のオイラーの連鎖式参考:への適応オイラーの連鎖式自体は陽関数でも陰関数でも成り立つ。 そこで、陰関数では全ての変数を平等に扱うため、対称性の良いオイラーの連鎖式を考えるには都合が良い。 このため、まず本節で陰関数のオイラーの連鎖式を説明してから、次節で参考として陽関数のオイラーの連鎖式を説明する。 高校で習うは、陽関数と陰関数の2通りの考え方がある。 オイラーの連鎖式は3つの変数に関する公式であるため、陰関数で考える場合は3変数関数で考える必要がある: 陽関数で考える場合、もも陽微分となり、陽陽で「」が現れず、そのまま約分可能となる。
この時点で、オイラーの連鎖式に登場する3つの微分が全て陰微分で、掛け合わせると ・ 符号が「」が3つで「」に、 ・ 大きさが分母・分子で打ち合わせて1に、 と合わせてなるのが容易に予想できる。 具体的にオイラーの連鎖式を1次近似の係数で読み替えると以下のようになる。 まず、式1を1次近似すると: 陰関数で考える場合、もも陰微分となり、陰陰で「」は2つ現れては打ち消される。
次に、真面目に計算しても良いが、以下のように対応する係数を逆さに書いて、「」を付ければ完成: どちらの結果もと自体を約分しているように見えるため、符号を気にしなくとも計算できる。 このように作るオイラーの連鎖式に現われる3つの微分を表に纏めると:
したがって、陰関数のオイラーの連鎖式は以下のように読み替えできる: 陽関数のオイラーの連鎖式(参考)本題:への適応陰関数で考えた方が例外が少なくて楽だが、 物理学や工学で扱う方程式 *10 の多くが陽関数になるため、参考として陽関数での読み方を説明する。 大学で習うは、 陽関数、、の3通りと、 陰関数を合わせて計4通りの考え方がある。 オイラーの連鎖式は3つの変数についての公式であるが、陽関数で考える場合は1つを従属変数にするため、2変数関数で済む:陽関数で考える場合、 が陰微分、とが陽微分となり、係数を約分しても陰陽陽で「」が残る。
この時点で、オイラーの連鎖式に登場する3つの微分の内、を含む2つが陽微分で、残り1つが陰微分であるのが分かる。 したがって、これらを掛け合わせると ・ 符号が「」が1つで「」に、 ・ 大きさが分母・分子で打ち合わせて1に、 となるのが容易に予想できる。 具体的にオイラーの連鎖式を1次近似の係数で読み替えると以下のようになる。 まず、式3を1次近似すると: 陽関数やで考えても、陰になる微分が変わるだけで、1陰2陽の関係は変わらない。
次は計算になるが、陽関数のため3パターンに増える:
以上の結果を表に纏めると:
陰関数で考える場合、陰陰陰と全て陰微分になるだけで、答えは変わらない。
陰関数では全ての変数が独立変数であるため、陰関数の微分は全て陰微分になる。 したがって、陰関数で考え、全ての微分を一律「」付きの陰微分として扱うのが楽である。
まとめ・つなぎオイラーの連鎖式の符号は、「偏微分が約分できない」の代名詞のように使われることがある。 しかし、それは常微分と偏微分の違いではなく、被微分変数と微分変数の関係の違いである。 微分の基本である微分係数に立ち戻って工夫をすれば、ちゃんと小学校レベルの約分になる。 「微分は分数ではないので約分できない」ではなく、「偏微分だから約分できない」でもなく、 「微分から近似式の係数に簡単に変換でき、係数であれば簡単に約分できる」と教えて欲しい。 |