オイラーの連鎖式 のバックアップの現在との差分(No.18) |
凌宮読取術:凌宮読解術: ⇒任意の2変数関数について、オイラーの連鎖式と呼ばれる恒等式が成立する*1。
問題は、などを約分してにしたどころで、そんな期待を裏切るである。 問題は、などを形式的に約分してと書きたいどころ、期待を裏切るである。 一般的な証明*2*3は式を弄り回したら合ったレベルで、とても直感的とは言えない。 *4 *5 は式を色々弄ったら合ったようなもので、とても直観的とは言えない。 しかし、それだけで「偏微分は約分できない」と諦めるのは、まだ早計である。 が約分できる結果だけ見て、を約分するから上手く行かない。 が約分できる原因を考えば、を約分は勿論、負号も問題なく処理できる。 しかし、それだけで「偏微分は約分できない」と諦めるのは、まだ勿体ない。 が約分できる結果だけ見てをそのまま消すから、計算が上手く行かない。 が約分できる仕組みを見てを正しく読み替えると、約分も負号も直観的に考えられる。 凌宮数学では、オイラーの連鎖式は以下のように読み替える: 凌宮数学では、オイラーの連鎖式は以下のように読み替えてから約分する:
*1
熱力学や熱化学では結ぶマクスウェルの規則の形で学ぶことになる。
*2 参考:熱学の基礎/微分公式/偏微分 *3 参考:EMANの物理学/熱力学/状態方程式の微分形 *4 参考:熱学の基礎/微分公式/偏微分 *5 参考:EMANの物理学/熱力学/状態方程式の微分形 陰微分と陽微分微分には「関数を1次近似した近似式の係数」すなわち微分係数という解釈がある。 例えば、関数は1次式と近似できるが、 変数との係数とが微分係数で、それぞれがの偏微分、となる。 一方で、からやにつて解いた一次式からも微分係数が得られる。 例えば、について解いた式からは、、が得られる。 同様に、について解いた式からは、、が得られる。 微分係数としての微分
微分の捉え方の一つに、微分係数という考え方がある。 それは、関数の1次近似を考える際、得られる1次式の係数を微分と定義する方法である。 ここで重要なのは、移項で「」が発生することである。 その移項は独立変数について解くためで、移項で「」付くのは別の独立変数の項に限る。 このため、分母・分子とも独立変数の微分を見抜けば、「」を正しく書ける。
そこで、凌宮数学では以下のように陰微分と陽微分を定義する。
やを計算するのに、の1次近似式から移項で作った式を利用した。 と置いてと近似しても良いが、記号が増えるだけで計算にならない。 もも同じ関係を記述している以上、近似式も1つ選んで使い続けば良い。 すると、関数の1次近似式の係数で微分の値を表すとき、微分の陰陽で「」の有無を判定できる。
重要なのは以下の4点:
陽微分と陰微分参考:への適応以上の結果を受けて、凌宮数学では以下のように陽微分と陰微分を定義する。
そうすると、関数を一次近似した式の係数の割り算で微分の値を表すとき、 陽微分には負号が付かず、陰微分には「」が付く性質を持つ。 高校ではのような1変数関数しか考えないため、自ずと陽微分になる。 したがって、陽微分は高校からならう微分係数そのもので、いわゆる通常の微分と言える。 これに対し、陰微分は大学で黙って登場するが、係数で書くと「」が付く新しい微分と言える。 陽微分で考えると、高校で習うは、 関数をに関する2つの陽微分であり、約分できて、「」が付かない、という結果になる。 陽関数で考える場合、もも陽微分となり、陽陽で「」が現れず、そのまま約分可能となる。
約分の対象は近似式の係数であるが、「」が付かないためとを消していると考えても通る。 同様に、大学で習うは、 関数をで考えると、1つの陰微分と2つの陽微分、の積であるため、 係数の約分は相変わらずで、符号は3つの「」で「」になる。 陰関数で考える場合、もも陰微分となり、陰陰で「」は2つ現れては打ち消される。
どちらの結果もと自体を約分しているように見えるため、符号を気にしなくとも計算できる。 陰関数のオイラーの連鎖式本題:への適応オイラーの連鎖式自体は陽関数でも陰関数でも成り立つ。 そこで、陰関数では全ての変数を平等に扱うため、対称性の良いオイラーの連鎖式を考えるには都合が良い。 このため、まず本節で陰関数のオイラーの連鎖式を説明してから、次節で参考として陽関数のオイラーの連鎖式を説明する。 大学で習うは、 陽関数、、の3通りと、 陰関数を合わせて計4通りの考え方がある。 オイラーの連鎖式は3つの変数に関する公式であるため、陰関数で考える場合は3変数関数で考える必要がある:陽関数で考える場合、 が陰微分、とが陽微分となり、係数を約分しても陰陽陽で「」が残る。
この時点で、オイラーの連鎖式に登場する3つの微分が全て陰微分で、掛け合わせると ・ 符号が「」が3つで「」に、 ・ 大きさが分母・分子で打ち合わせて1に、 と合わせてなるのが容易に予想できる。 具体的にオイラーの連鎖式を1次近似の係数で読み替えると以下のようになる。 まず、式1を1次近似すると: 陽関数やで考えても、陰になる微分が変わるだけで、1陰2陽の関係は変わらない。
次に、真面目に計算しても良いが、以下のように対応する係数を逆さに書いて、「」を付ければ完成:
このように作るオイラーの連鎖式に現われる3つの微分を表に纏めると: 陰関数で考える場合、陰陰陰と全て陰微分になるだけで、答えは変わらない。
したがって、陰関数のオイラーの連鎖式は以下のように読み替えできる: 陰関数では全ての変数が独立変数であるため、陰関数の微分は全て陰微分になる。 したがって、陰関数で考え、全ての微分を一律「」付きの陰微分として扱うのが楽である。
陽関数のオイラーの連鎖式(参考)まとめ・つなぎオイラーの連鎖式の符号は、「偏微分が約分できない」の代名詞のように使われることがある。 しかし、それは常微分と偏微分の違いではなく、被微分変数と微分変数の関係の違いである。 微分の基本である微分係数に立ち戻って工夫をすれば、ちゃんと小学校レベルの約分になる。 陰関数で考えた方が例外が少なくて楽だが、 物理学や工学で扱う方程式 *7 の多くが陽関数になるため、参考として陽関数での読み方を説明する。 「微分は分数ではないので約分できない」ではなく、「偏微分だから約分できない」でもなく、 「微分から近似式の係数に簡単に変換でき、係数であれば簡単に約分できる」と教えて欲しい。 オイラーの連鎖式は3つの変数についての公式であるが、陽関数で考える場合は1つを従属変数にするため、2変数関数で済む:
この時点で、オイラーの連鎖式に登場する3つの微分の内、を含む2つが陽微分で、残り1つが陰微分であるのが分かる。 したがって、これらを掛け合わせると ・ 符号が「」が1つで「」に、 ・ 大きさが分母・分子で打ち合わせて1に、 となるのが容易に予想できる。 具体的にオイラーの連鎖式を1次近似の係数で読み替えると以下のようになる。 まず、式3を1次近似すると: 次は計算になるが、陽関数のため3パターンに増える:
以上の結果を表に纏めると:
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