凌宮組立術: $$ \:A \vx (\:B \vx \:C) = (\:A \sx \:C) \:B - (\:A \sx \:B) \:C $$ EditToHeaderToFooter

ベクトル三重積の公式は、ベクトル公式の中でも非常に覚えにくい。
ところが、数式の性質を利用すれば、公式をパズルのように書き出すことができる。

(1) 垂直の垂直で元の平面 ⇒ 平面上で成分分解 EditToHeaderToFooter

left,aroundleft,around

まず、左辺の$$ \:A \vx (\:B \vx \:C) $$について、
外積の性質として$$ \iro[ao]{\:B \vx \:C} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$の両方に垂直のため、
$$ \iro[ao]{\:B \vx \:C} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$を含む平面に垂直。

同様に、$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ \iro[ao]{\:B \vx \:C} $$に垂直。
その結果、$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$は、$$ \:B $$$$ \:C $$を含む平面に垂直なベクトルに垂直ということで、
垂直垂直元の平面に戻る。

left,around

というわけで、$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$と同一平面上にある。
よって、$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$に成分分解できる*1
これを穴埋めの形で書くと、こうなる:

$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ = $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:C} $$

ここで、$$ \fbox{\phantom{X}} $$にはスカラの係数が、$$ \textcircled{\phantom{X}} $$には「$$ + $$」または「$$ - $$」の符号が入る。

*1 難しい言い方をすると、$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$を平面の基底として、同平面上にある$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$を成分分解できる。

(2) 次元解析 & スカラ積=内積 EditToHeaderToFooter

次は、$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$が3つの文字の掛け算であるため、次元は掛け算の種類を問わず、$$ \:A \:B \:C $$の次元である*2
よって、$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:C} $$も3文字の掛け算であるべき。

$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ = $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ (\:A \spc{?}{\vx} \:C) $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ (\:A \spc{?}{\vx} \:B) $$$$ \iro[md]{\:C} $$

さらに、係数はスカラ値である必要があるため、$$ ? $$は自ずとスカラ積すなわち内積になる*3

$$ \iro[ak]{\:A \vx (\:B \vx \:C)} $$$$ = $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ (\:A \sx \:C) $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ (\:A \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:C} $$

*2 次元が良く分らない人は物理単位で考えば良い。例えば、$$ \:A $$が[m]、$$ \:B $$が[s]、$$ \:C $$が[g]とか。
*3 実際、2つのベクトルからスカラ値を作る積は内積だけではない。しかし、どれも内積よりはずっと複雑になる。幸い、ベクトル三重積は意外に簡単であるので、一番単純な内積で良い。

(3) 符号判定 & 簡単化 EditToHeaderToFooter

外積の交代性で$$ \:B \vx \:C $$$$ = $$$$ - \:C \vx \:B $$であるため、右辺も$$ \:B $$$$ \:C $$が交代したらマイナスになる。
$$ (\:A \sx \:C) $$$$ \:B $$$$ \:B $$$$ \:C $$が交代したら$$ (\:A \sx \:B) $$$$ \:C $$になるため、交代則を成立させるには、2つの$$ \textcircled{\phantom{X}} $$には「+」と「−」と逆の符号が入る。

この符号は外積の立体的な回転を2回も考える必要がある。
今は符号さえ分かれば良いので、問題を簡単にしてから調べれば良い。

left,aroundleft,around

$$ \:B \vx \:C $$は外積であるため、結果が変らないように$$ \iro[md]{\:B} $$と垂直な$$ \iro[md]{\:C'} $$を選べる。
$$ \:A \vx (\:B \vx \:C) $$も同様、結果が変らないように$$ \iro[ao]{\:B \vx \:C} $$と垂直な$$ \iro[ao]{\:A'} $$を選べる。
さらに、$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C'} $$をそれぞれ直交座標系の単位ベクトル$$ \:i $$$$ \:j $$にしても符号は変らない*4
対して、$$ \iro[ao]{\:A'} $$$$ \:i + \:j $$としても符号に影響を与えない*5
仕舞に、$$ \iro[ao]{\:A'} $$$$ \:i $$に選んでも片方の符号は出てくる*6

そうすると、ベクトル三重積が、空間ベクトルの基本である単位ベクトルの定義に帰着される:

正順逆順
$$ \:i $$$$ \vx $$$$ \:j $$$$ = $$$$ \:k $$$$ \:j $$$$ \vx $$$$ \:i $$$$ = $$$$ -\:k $$
$$ \:j $$$$ \vx $$$$ \:k $$$$ = $$$$ \:i $$$$ \:k $$$$ \vx $$$$ \:j $$$$ = $$$$ -\:i $$
$$ \:k $$$$ \vx $$$$ \:i $$$$ = $$$$ \:j $$$$ \:i $$$$ \vx $$$$ \:k $$$$ = $$$$ -\:j $$

$$ \:A \vx (\:B \vx \:C) $$
$$ \:i \vx (\:i \vx \:j) $$$$ = $$$$ \:i $$$$ \vx $$$$ \:k $$$$ = $$$$ -\:j $$
$$ -\:C $$

$$ \:B $$$$ \:i $$
$$ \:C $$$$ \:j $$

というわけで、$$ \:C $$の前が「$$ - $$」、残る$$ \:B $$の前は「$$ + $$」となる。

$$ \iro[ao]{\:A} \vx (\iro[md]{\:B} \vx \iro[md]{\:C}) $$$$ = $$$$ + $$$$ (\:A \sx \:C) $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ - $$$$ (\:A \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:C} $$

他方、紛らわしい$$ (\iro[md]{\:A} \vx \iro[md]{\:B}) \vx \iro[ao]{\:C} $$も全く同様に置換すれば良い。

$$ (\:A \vx \:B) \vx \:C $$
$$ (\:i \vx \:j) \vx \:i $$$$ = $$$$ \:k $$$$ \vx $$$$ \:i $$$$ = $$$$ +\:j $$
$$ +\:B $$

$$ \:A $$$$ \:i $$
$$ \:B $$$$ \:j $$

というわけで、$$ \:B $$の前が「$$ + $$」、残る$$ \:A $$の前は「$$ - $$」となる。

$$ (\iro[md]{\:A} \vx \iro[md]{\:B}) \vx \iro[ao]{\:C} $$$$ = $$$$ - $$$$ (\:C \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:A} $$$$ + $$$$ (\:C \sx \:A) $$$$ \iro[md]{\:B} $$

*4 大きさだけが変る。
*5 $$ \:i $$$$ \:j $$の係数が共に正である限り、成分に含まれる符号は出てこない。
*6 $$ \:i + \:j $$を選んだ場合、$$ (\:i + \:j) $$$$ \vx (\:i \vx \:j) $$$$ = $$$$ \:i - \:j $$になるように、両方の符号が出てくるだけ。

参考: 少し古い符号判定(〜2014年) EditToHeaderToFooter

ベクトル三重積公式の左辺には2つの書き方があり、掛け方によって符号が逆転する。

$$ \iro[ao]{\:A} \vx (\iro[md]{\:B} \vx \iro[md]{\:C}) $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:C} $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ + $$$$ (\:A \sx \:C) $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ - $$$$ (\:A \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:C} $$

$$ (\iro[md]{\:A} \vx \iro[md]{\:B}) \vx \iro[ao]{\:C} $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:A} $$$$ \textcircled{\phantom{X}} $$$$ \fbox{\phantom{X}} $$$$ \iro[md]{\:B} $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ - $$$$ (\:C \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:A} $$$$ + $$$$ (\:C \sx \:A) $$$$ \iro[md]{\:B} $$

この符号は外積の回転方向を2回も考える必要がある。
3次元空間でぐるぐる回るのは結構面倒なので、便宜的な手法ではあるが2次元で済ませたい。
さらに、三重積は任意のベクトルで成立するため、次の2つの条件を満たす単純な例で済ませたい。

  • 先に掛け合わせるベクトルが互いに垂直*7
  • 後に掛け加えるベクトルが前の片方と同じ向き*8*9

論はないが証拠、これで(片方の)符号が分る:

left,aroundleft,around

$$ \iro[ao]{\:A} \vx (\iro[md]{\:B} \vx \iro[md]{\:C}) $$について、まず$$ \iro[md]{\:B} $$$$ \iro[md]{\:C} $$右から掛けて、$$ \iro[ao]{\:A} $$左から掛ける。
ポイントは掛ける向きが逆であるため、向きが打ち消して元の$$ \iro[md]{\:B} $$の向きになる。
したがって、$$ \iro[md]{\:B} $$の符号は「$$ + $$」になり、残る$$ \iro[md]{\:C} $$には逆の「$$ - $$」が付く。

$$ \iro[ao]{\:A} \vx (\iro[md]{\:B} \vx \iro[md]{\:C}) $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ + $$$$ (\:A \sx \:C) $$$$ \iro[md]{\:B} $$$$ - $$$$ (\:A \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:C} $$

$$ (\iro[md]{\:A} \vx \iro[md]{\:B}) \vx \iro[ao]{\:C} $$について、まず$$ \iro[md]{\:A} $$$$ \iro[md]{\:B} $$右から掛けて、$$ \iro[ao]{\:C} $$をさらに右から掛ける。
ポイントは掛ける向きが同じであるため、そのまま回し続けて$$ \iro[md]{\:B} $$と逆の向きになる。
したがって、$$ \iro[md]{\:A} $$の符号は「$$ - $$」になり、残る$$ \iro[md]{\:B} $$には逆の「$$ + $$」が付く。

$$ (\iro[md]{\:A} \vx \iro[md]{\:B}) \vx \iro[ao]{\:C} $$

$$ \;\Rightarrow\; $$$$ - $$$$ (\:C \sx \:B) $$$$ \iro[md]{\:A} $$$$ + $$$$ (\:C \sx \:A) $$$$ \iro[md]{\:B} $$

*7 やっていることは$$ \:B \:C $$平面上のベクトルの成分分解であるため、斜交座標より直交座標系を使う方が直角が多くて簡単。
*8 $$ \:A $$は空間上に浮いても、$$ \:B \:C $$平面上の成分しか外積の結果に影響を与えないため、$$ \:B \:C $$平面上に乗せても結果は同じ。
*9 重ねることにより考える成分が1つ減るため、楽が出来る。片方の符号が決まれば他方も決まるため、1成分の符号だけ分れば十分。

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$$ \iro[ao]{\:A'} $$$$ \iro[ao]{\:A_B'} $$$$ \iro[ao]{\:A_C'} $$$$ \iro[md]{\:C'} $$$$ \:i $$$$ \:j $$

file符号ix(ixj).png 369件 [詳細] file符号Ax(BxC).png 380件 [詳細] file符号判定(AxB)xC.png 695件 [詳細] file符号判定Ax(BxC).png 760件 [詳細] filePerpPerp.png 771件 [詳細] fileBxC.png 857件 [詳細] fileAxBxC+-.png 422件 [詳細] fileAx(BxC).png 1016件 [詳細] fileAx(BxC)+-.png 405件 [詳細]
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