掛け算の言い方【調査中】【編集中】
掛け算の言い方について、日本語と、日本語に大きな影響を与えている中国語と英語*1で順番が入れ替わっている。
以下では、その変遷と対応関係について纏める。
ヨーロッパ言語の代表として
中国語の場合
以N乗X
- 古い形式、通常の文法規則に従う。
- 「乗」は動詞、「X」は動詞の目的語
- 「以」は前置詞、「N」は前置詞の目的語
- 「以N」の形で、「乗」に第二の目的語を付与する。
- 以N乗X、乗Y、乗Zのような遊離も可能。
- 算木の計算手順で、XをN回だけ乗せる操作を表す文としても成立つ。
例:九章算術巻第一:方田 *2
- 原文: 以三百七十五乘之、即畝數。
- 訓読: 三百七十五を以て之に乗ずれば、即ち畝の数。
- 和訳: 375をこれに掛けると、畝の数となる。
N乗X(古代中国語)
AB相乗
- AとBが同種の量の場合に使われる表現。
- AとBが分離されず、共通の修飾語で修飾される構文が許容される。
例:九章算術巻第一:方田、里田術*3
- 原文: 里田術曰、廣從里數相乘得積里。
- 訓読: 里田術に曰う、広・従の里数相乗じて積里を得。
- 和訳: 里田術に曰う、横・縦の里数を掛けると積里が得られる。
例:九章算術巻第一:方田 *4
- 原文: 又術曰、徑自相乘、三之、四而一。
- 訓読: 又、術に曰う、径自ら相乗じて、之を三し、四にして一とす。
- 和訳: た、術にいう、直径を自乗して、これを3倍し、 4分の1にする。
X乗以N
- 現代中国語において「X×N」に対応した表現。
- Xが被乗数、Nが乗数と呼ばれる。
- 語源的に「以N乗X」の語順が変化し「X乗以N」という形を取る。
- 現代中国語の文法から逸脱し、「乗以」を一つの動詞と見なす例外的な構文となる。
- 「乗X以N」の語順は見当たらない。
A乗B(2000〜)
- 現在中国語において「A×B」に対応した表現。
- 2000年前後に被乗数×乗数が政治的に廃止され、因数×因数に統一された。
同時に、「×」の読みが「乗以」から「乗」に統一された*5。
ただし、中国大陸のみの動きであり、台湾など他の中国語圏には影響が及ばない。 | 〜1999 | 2000〜*6 |
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加法 | 被加数 | 加 | 加数 | 加数 | 加 | 加数 |
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減法 | 被減数 | 減 | 減数 | 被減数 | 減 | 減数 |
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乗法 | 被乗数 | 乗以 | 乗数 | 因数 | 乗 | 因数 |
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除法 | 被除数 | 除以 | 除数 | 被除数 | 除 | 除数 |
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| 00后的小学《数学》课本改版了。 “乘以” 被废除了,只允许说 “乘”。 “被乘数” 和 “乘数” 也被废除了,只允许说 “因数”。
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英語の場合
日本語の場合
- 昔は中国算術の影響を受け、「BニAヲ乗ずる」とした。
- 今は西洋算術の影響を受け、「AにBを掛ける」としている。
- 助詞の交替が起きている。
参考資料