極限の分割 のバックアップの現在との差分(No.2) |
背景自然底に対し、の証明で、定義式を2変数関数と見なして、極限操作と上下限操作で直観的に示す方法が示されていた。問題があるとして削除されたが、考え方自体は面白いし良さそうなので、考えてみた。の証明で、自然底の定義式を2変数関数と見なして、 直観的に2段階に分けて極限を取る方法が示されていた。 問題があるとして削除されたが、考え方自体は面白いし良さそうなので、考えてみた。 お題:
極限を分割しない方法本題に入る前に、極限操作の分割を回避し、既に利用されている各項で上から抑える発想のみで解く方法を示す。最初の不等号では、を利用している。例えばである。 であり、各因数においてが言えるため、が成り立つ。 次の不等号では、を利用している。例えばである。 であり、を除き各因数においてが言えるため、が成り立つ。 極限の分割可否2変数関数としての一般論上下で押さえる発想だけで示せることを確認したところで、本題に入る。 示された手法の問題点は、極限を取る文字が形式的に複数回使われる式に対し、箇所毎に極限を取る操作の同値性と言える。 オリジナルの手法では、をに変換している。 と置けば、という問題になる。 例えば、について、 からを作っても、 と、 に一致する。 しかし、について、 からを作ったら、と、 とは異なる結果を出してしまう。 よって、範囲を気軽に任意の2変数関数に広げてはと成立しなくなる。 一般に、多変数関数では「接近経路に寄らずに一定の値を取る」ことが極限を定義できる条件になっている。 cf: http://webmath.las.osakafu-u.ac.jp/top/std/help/help0102011001.pdf はをの線上に沿ってに近づけることに等しい。 は任意点から出発し、軸に平行にまで近づいてから、 最終的に軸に平行にに近づけることに等しい。 接近経路次第で極限値が変わる関数のグラフから軸に平行にに近づける経路はグラフにできないため、 と定義して、とに変換しての原点付近を図示してみる。 対応する関数は、であり、 考える極限と接近は、という直線に沿う接近と、 という、かつなる任意点から出発し、 軸に平行にに近づいてから、最終的に軸に平行にまで近づく接近になる。 WolframAlphaでをプロットしてみると付近に捩じれた谷と山が見える。
原点を除き、の線上は常に同じ値を取り、付近では山と谷が隣り合わせになる。 原点付近は、近づいてくる方向によって、如何なる値も取れるわけである。 これはを定義できない理由でもある。 2変数関数としての一般論2変数関数に対して一般的に成立しないため、場合によってはこの成立条件を示す必要がある。 実際問題、少なくとも2階微分が可能なほどに滑らかな級の関数であれば、任意方向に滑らかで連続的ということで要件を満たす。 細かい証明を示すには、 2変数関数の分割極限に対し、 1変数に束縛した関数の極限が存在するとして、 両者が一致するか。 もしであれば、 極限を取る順番を入れ替えることで異なる値を取る両者に共通の値を対応できないため、不成立は自明である。 この可換性は、の極限の存在条件ともされ、f(u,v)が微分可能なら $$ \lim_{(u,v)\to(k,k)} $ \lim_{u\to k} $ f(u,v) $ そのため、 利点この手法が優れているのは、直観的な正項級数にあるとも。 例えば、を証明する類の問題では、適当な項まで計算して打ち切れば下端を出せて、適当な等比数列の級数で上から押さえれば上端を出せる。 にを加えてもと欲しい下限より大きいが、 更にを加えてにすればより十分に大きい下限を得られる*1。 残差はからの級数で、さえ括りだせば、他の因数を全てと見なした緩い上端を出せる。 のため、に加えればというに対して十分に小さい上端を得られる。 |