$$ \ddd{y}{x} + ay = R $$ EditToHeaderToFooter

凌宮読取術:$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$$$ (D + a) $$$$ y $$$$ = R $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$ EditToHeaderToFooter


定数係数1階線形常微分方程式は上記の形をしている。

ここで、$$ y $$$$ R $$$$ x $$の関数$$ y(x) $$$$ R(x) $$で、$$ a $$$$ x $$の定数$$ a\overline{(x)} $$*1である。

解の公式は積分式で与えられる:

定数係数の1階線形常微分方程式とその解の公式は次のようになっている:

$$ \ddd{y}{x} + ay = R $$  ⇒  $$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} R\, dx $$*2 $$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$ ⇔ $$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$


暗記さえできれば、定数係数で1階の線形な常微分方程式に関しては、必ず解けることになる。

しかし問題は、丸暗記では既習や未習の知識と繋がりを持たず、全体を効率良く学べない。

特に、直後に学ぶ定数係数階線形常微分方程式は、階を応用すれば難しい暗記が不要になる。

定数係数の1階線形常微分方程式は微分で定義される多くの分野で現れるため、

「変数分離法&定数変化法」
*3という定番解法が大学入学早々叩き込まれる。

これらに対し、凌宮数学では、2階ないし$$ N $$階の定数係数常微分方程式に繋がるような、

学習済み知識に基づいた定数係数1階線形常微分方程式のもう少し考え易い解き方を与える。

変数分離法と定数変化法では解けることができても、直観的に解を得るのは難しい。

その上、高階の方程式を解くのに1階の解が多用されるため、ほぼ丸暗記する羽目になる。

例えば$$ D $$$$ \equiv $$$$ \ddd{}{x} $$とする演算子法では、逆演算子$$ \ffd{1}{D+a} $$の形で暗記対象になる
*4
$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$ ⇔ $$ y $$$$ = $$$$ (D+a)^{-1} $$$$ R $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$

これに対し、凌宮数学では直観を重視する演算子法を拡張し、

指数変換演算子$$ E_a $$を導入して、$$ (D+a) $$$$ +a $$に単純な意味を与え、

高階の常微分方程式に繋げやすい解法を与える。
$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$
$$ (D + a) $$$$ y $$$$ = R $$
$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$
*1 $$ a\overline{(x)} $$は凌宮数学の定数表記であり、$$ \ddd{a}{x} $$$$ = $$$$ 0 $$を表す。
*2 $$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \Big( $$$$ \int $$$$ e^{ax} R dx $$$$ + $$$$ C $$$$ \Big) $$と積分定数を明示する書き方もあるが、煩雑のため凌宮数学では使わない。
*3 EMANの物理学>物理数学>微分方程式>一階線形微分方程式: http://homepage2.nifty.com/eman/math/differential07.html
*4 EMANの物理学>物理数学>微分方程式>演算子法: http://homepage2.nifty.com/eman/math/differential12.html

定数係数1階線形常微分演算子$$ (D+a) $$の分解表記 EditToHeaderToFooter

$$ D $$の逆演算子 EditToHeaderToFooter


一般に、微分$$ D $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$に対し、不定積分$$ y $$$$ = $$$$ \int $$$$ R $$$$ dx $$が定義される。

このため、微分演算$$ D $$の逆演算$$ D^{-1} $$は不定積分$$ \int $$$$ dx $$となる。

$$ \ddd{F}{x} $$$$ = $$$$ f $$ ⇔ $$ F $$$$ = $$$$ \int f dx $$*5 EditToHeaderToFooter


上記は常微分と不定積分の変換式であるが、1つの微分に纏まれば積分で解けることを意味する。

$$ \ddd{y}{x} + ay = R $$の場合は、左辺$$ L $$$$ = $$$$ \ddd{y}{x} + ay $$$$ \ddd{F}{x} $$に纏めらると、積分で解ける。

$$ (D+a)^{-1} $$の分解表記 EditToHeaderToFooter


左辺$$ L $$の特徴は、「$$ \ddd{y}{x} $$」、「$$ y $$」、「加算」である。

高校から学んだ微分公式を順に当たれば、最初に出揃うのは積の微分である:

定数係数の1階線形常微分方程式とその解の公式の積分を$$ D^{-1} $$で書き換えると:

$$ \ddd{(pq)}{x} $$$$ = $$$$ p $$$$ \ddd{q}{x} $$$$ + $$$$ \ddd{p}{x} $$$$ q $$*6 $$ y $$$$ = $$$$ \iro[ao]{e^{-ax}} $$$$ D^{-1} $$$$ (\iro[ao]{e^{ax}} R) $$


左辺を$$ 1 \ddd{y}{x} + ay $$として$$ p $$$$ \ddd{q}{x} $$$$ + $$$$ \ddd{p}{x} $$$$ q $$と比較すると、 $$ y = q $$が上手く嵌るものの、

残念ながら$$ 1 $$$$ = $$$$ p $$$$ a $$$$ = $$$$ \ddd{p}{x} $$を同時に満たす$$ p $$は存在しない*7

このため、$$ D+a $$の逆演算子である$$ (D+a)^{-1} $$は形式的に次のように分解できる:
$$ (D+a)^{-1} $$$$ = $$$$ \iro[ao]{e^{-ax}} $$$$ D^{-1} $$$$ (\iro[ao]{e^{ax}} \ast) $$
*5 $$ F $$$$ = $$$$ F(x) $$$$ f $$$$ = $$$$ f(x) $$
*6 $$ p $$$$ = $$$$ p(x) $$$$ q $$$$ = $$$$ q(x) $$
*7 $$ 1 $$$$ = $$$$ p $$の時点で$$ \ddd{p}{x} $$$$ = $$$$ 0 $$となってしまうため、$$ a $$$$ = $$$$ \ddd{p}{x} $$を満たせるのは$$ a $$$$ = $$$$ 0 $$の場合に限られる。

問題は、$$ \ast $$と書いている箇所に$$ R $$が入るが、これを簡単に省けない。

$$ D^{-1} $$$$ e^{ax} $$$$ \ast $$の両方に掛かるが、$$ D^{-1} $$$$ e^{ax} $$と書いた場合は$$ e^{ax} $$だけの積分に化けてしまう。

このため、積分対象を簡潔にかつ正しく記述するには、$$ e^{ax} $$も演算子にする必要がある。

指数変換演算子: $$ E_a $$$$ = $$$$ e^{ax} $$ EditToHeaderToFooter


$$ E_a $$$$ = $$$$ e^{ax} $$と指数変換演算子を定義すると、

$$ E_a $$は必ず何かに作用し、$$ D^{-1} $$$$ E_a $$だけで$$ D^{-1} $$$$ (e^{ax} \ast) $$を表現できるようになる。

$$ E_a $$を使えば、$$ (D+a)^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_{\pm a} $$の演算子チェーンとして記述できる:
$$ (D+a)^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_{-a}} $$$$ D^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_a} $$

さらに、$$ E_a $$$$ e^{ax} $$の掛算であるため、逆演算子$$ E_a^{-1} $$$$ e^{ax} $$の逆数の掛算となる:
$$ E_a^{-1} $$$$ = $$$$ (e^{ax})^{-1} $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ = $$$$ E_{-a} $$
これを利用すれば、$$ (D+a)^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_{a} $$だけの演算子チェーンとして記述できる:
$$ (D+a)^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_a^{-1}} $$$$ D^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_a} $$

意味は、$$ E_a $$指数変換してから、積分して、$$ E_a $$逆変換を掛ける、と読める。

積分因子 EditToHeaderToFooter


$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$のままでは1つの微分に纏まらないため、これを弄ることになる。

ただし、右辺に$$ y $$が入ると積分できなくなるため、右辺を$$ x $$の関数に保たせる必要がある。

$$ (D+a) $$の分解表記 EditToHeaderToFooter


$$ \ddd{y}{x} $$の係数が$$ 1 $$である故に$$ p $$$$ = $$$$ 1 $$と決まってしまうため、

$$ u $$$$ = $$$$ u(x) $$を掛けてみると、1つの微分に纏まりそうな$$ u\ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ auy $$が現れる。

掛けた$$ u $$は積分因子と呼ばれ、微分の形が変わるため積分因子を掛ける手法は良く利く。

$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$の逆演算を取ると、$$ (D+a) $$が得られる:
$$ ( $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$$$ )^{-1} $$
$$ (E_a)^{-1} $$$$ (D^{-1})^{-1} $$$$ (E_a^{-1})^{-1} $$
チェーンの逆演算は、各演算子の逆演算を逆順に並び*8
$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$
逆演算の逆演算は正演算

意味は、$$ E_a $$指数変換してから、微分し、逆変換を掛ける、と読める。

左辺$$ u\ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ auy $$$$ p $$$$ \ddd{q}{x} $$$$ + $$$$ \ddd{p}{x} $$$$ q $$と比較すると、 $$ u $$$$ = $$$$ p $$$$ au $$$$ = $$$$ \ddd{p}{x} $$が得られる。

$$ u $$$$ = $$$$ p $$$$ au $$$$ = $$$$ \ddd{p}{x} $$に代入すれば変数分離形という易しい微分方程式が得られる:

ポイントは$$ D^{-1} $$が正演算に戻るだけで、$$ E_a^{-1} $$$$ E_a $$に関しては変わりが無い。

$$ a $$$$ u $$$$ = $$$$ \ddd{u}{x} $$ $$ (D+a)^{\phantom{+1}} $$$$ = $$$$ \iro[ao]{E_a^{-1}} $$$$ D^{\phantom{+1}} $$$$ \iro[ao]{E_a} $$

指数変換→微分→逆変換

⇔ $$ \ffd{du}{u} $$$$ = $$$$ a $$$$ dx $$ $$ (D+a)^{-1} $$$$ = $$$$ \iro[ao]{E_a^{-1}} $$$$ D^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_a} $$

変数分離 指数変換→積分→逆変換

*8 $$ FGx=y $$を纏めて飛ばすと$$ x=(FG)^{-1}y $$になるが、1つずつ飛ばすと$$ FGx=y $$$$ Gx=F^{-1}y $$$$ x=G^{-1}F^{-1}y $$

計算例 EditToHeaderToFooter


以上を纏めると、演算子分解法を使えば、定数係数1階数線形常微分方程式を以下のように解ける:

⇔  $$ \int \ffd{du}{u} $$$$ = $$$$ \int $$$$ a $$$$ dx $$ $$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

$$ Dy $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

両辺で不定積分 式1:常微分演算子表記

⇔  $$ \log_e |u| $$$$ = $$$$ ax $$$$ + $$$$ k $$$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

不定積分実行、積分定数を$$ k $$とする。 式2:定数係数1階線形常微分演算子表記

⇔  $$ u $$$$ = $$$$ \pm e^{ax + k} $$ $$ \iro[ao]{E_a^{-1}} $$$$ D $$$$ \iro[ao]{E_a} $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

両辺で指数を取る 式3:演算子分解

⇔  $$ u $$$$ = $$$$ \pm e^{k} $$$$ e^{ax} $$ $$ y $$$$ = $$$$ \iro[ao]{E_a^{-1}} $$$$ D^{-1} $$$$ \iro[ao]{E_a} $$$$ R $$

指数法則で定数部を分離 式4:逆演算子表記

$$ y $$$$ = $$$$ \iro[ao]{e^{-ax}} \!\!\int\!\! \iro[ao]{e^{ax}} $$$$ R $$$$ dx $$
式5:通常表記に復元

掛ける積分因子は自由に選べるため、以降は簡単そうな$$ u $$$$ = $$$$ e^{ax} $$を選ぶ。

演算子分解法に基づく、定数係数1階線形常微分方程式の解釈 EditToHeaderToFooter

回答例 EditToHeaderToFooter

上記式3を式4に書き換える途中、先頭の$$ E_a^{-1} $$だけを逆演算子に書き換えると式3’が得られる:

$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$ $$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

原方程式 式2

⇔ $$ e^{ax} $$$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ae^{ax} $$$$ y $$$$ = $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$

両辺に積分因子$$ e^{ax} $$を掛ける 式3’:$$ E_a^{-1} $$のみを逆演算子に書き換えた状態


式2と式3'を見比べれば、
$$ y $$$$ R $$に関する定数係数1階線形常微方程式は、
指数変換を施した$$ E_a $$$$ y $$$$ E_a $$$$ R $$に関する定数項無しの微分方程式であると解釈できる。
この考え方に基づくと、解答は次のように変る。

⇔ $$ e^{ax} $$$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ \ddd{(e^{ax})}{x} $$$$ y $$$$ = $$$$ e^{ax} $$$$ R $$ $$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

$$ Dy $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

指数の微分を逆適応(不定積分を実行) 式1:常微分演算子表記

⇔ $$ \ddd{(e^{ax} y)}{x} $$$$ = $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

積の微分を逆適応(部分積分を実行) 式2:定数係数1階線形常微分演算子表記

⇔ $$ e^{ax} y $$$$ = $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$

微分・不定積分の相互変換 式3’:定数係数無しの微分方程式に読み替え

⇔ $$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$$$ R $$

両辺に$$ e^{-ax} $$を掛けて$$ y $$の式に整理 式4:逆演算子表記

$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} \!\!\int\!\! e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$
式5:通常表記に復元

まとめ・つなぎ EditToHeaderToFooter


$$ D $$$$ = $$$$ \ddd{}{x} $$と置けば1階線形常微分方程式を$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$に書き換えるのは容易だろう。

その先、$$ (D+a)^{-1} $$$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$と答えを丸暗記するよりは、

段階的に$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$と分解してから個別に逆演算に直す方が覚えやすく、

$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$と両辺の指数変換$$ E_a $$を経ての$$ D $$と覚える方が理屈を付けやすいだろう。

$$ D+a $$に対し$$ E_a $$$$ D $$しか登場しなければ、$$ E_a^{-1} $$$$ E_a $$の順番を覚える必要が無くなる。

小さいことではあるが、片方に付くが他方に付かない「-1」などは、混乱の元でしか無い。
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