【簡略中】凌宮読取術:$$ (D + a) $$$$ y $$$$ = R $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$ EditToHeaderToFooter

定数係数の1階線形常微分方程式とその解の公式は次のようになっている:

$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$ ⇔ $$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$

定数係数の高階線形常微分方程式を解くため、
微分演算子$$ D $$$$ \equiv $$$$ \ddd{}{x} $$による演算子法が工学で多用される*1

$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$ ⇔ $$ y $$$$ = $$$$ (D+a)^{-1} $$$$ R $$

右辺を比較すれば、次の関係式が出てくる。

$$ (D+a)^{-1} $$$$ R $$$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$

一般的な演算子法でも、$$ \ffd{1}{D+a} $$は暗記対象になるが、
しかし、この左辺と右辺の対応は直観的ではなく、暗記は難しい。

これに対し、凌宮数学では、線形偏微分演算子$$ (D+a) $$を更に分解し、
直感的に考えやすいように単純な演算子を用いて、暗記な暗記に置き換える。

*1 逆演算として$$ (D+a)^{-1} $$が一般的な表記ではあるが、高階微分方程式の解法として部分分数分解を続けて使う文脈では分数型$$ \ffd{1}{D+a} $$とも表記される。

定数係数1階線形常微分演算子の演算子分解表記 EditToHeaderToFooter

$$ D $$の逆演算子 EditToHeaderToFooter

一般に、微分$$ D $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$に対し、不定積分$$ y $$$$ = $$$$ \int $$$$ R $$$$ dx $$が定義される。
このため、微分演算$$ D $$の逆演算$$ D^{-1} $$は不定積分$$ \int $$$$ dx $$となる。

$$ (D+a)^{-1} $$の分解表記 EditToHeaderToFooter

定数係数の1階線形常微分方程式とその解の公式の積分を$$ D^{-1} $$で書き換えると:

$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ D^{-1} $$$$ (e^{ax} R) $$

このため、$$ D+a $$の逆演算子である$$ (D+a)^{-1} $$は形式的に次のように分解できる:

$$ (D+a)^{-1} $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ D^{-1} $$$$ (e^{ax} \ast) $$

$$ \ast $$と書いている箇所に作用対象が入る。
$$ e^{ax} $$$$ e^{ax} $$の作用対象である$$ \ast $$の両方が$$ D^{-1} $$の積分対象に入るのがポイントである。
しかし、$$ \ast $$を抜いて、単に$$ D^{-1} $$$$ e^{ax} $$と書くと、$$ e^{ax} $$だけの積分に化けてしまう。
表記の曖昧さを無くすため、$$ e^{ax} $$も演算子にする必要がある。

指数変換演算子: $$ E_a $$$$ = $$$$ e^{ax} $$ EditToHeaderToFooter

凌宮数学では指数変換演算子を以下のように定義する。

$$ E_a $$$$ = $$$$ e^{ax} $$

演算子であるため、必ず何かに作用し、$$ D^{-1} $$$$ E_a $$だけで$$ D^{-1} $$$$ (e^{ax} \ast) $$を意味する。

すると、$$ (D+a)^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_{\pm a} $$の演算子チェーンとして記述できる:

$$ (D+a)^{-1} $$$$ E_{-a} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$

さらに、$$ E_a $$$$ e^{ax} $$の掛算であるため、逆演算子$$ E_a^{-1} $$$$ e^{ax} $$の逆数の掛算となる:

$$ E_a^{-1} $$$$ = $$$$ (e^{ax})^{-1} $$$$ = $$$$ e^{ax} $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$

これを利用すれば、$$ (D+a)^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_{a} $$だけの演算子チェーンとして記述できる:

$$ (D+a)^{-1} $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$

意味は、$$ E_a $$で変換してから、積分して、逆変換を掛ける、と読める。

$$ (D+a) $$の分解表記 EditToHeaderToFooter

$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$の逆演算を取ると、$$ (D+a) $$が得られる:

$$ ( $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$$$ )^{-1} $$

$$ (E_a)^{-1} $$$$ (D^{-1})^{-1} $$$$ (E_a^{-1})^{-1} $$

演算子チェーンの逆演算は、各演算子の逆演算を逆順に並び

$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$

逆演算の逆演算は正演算

ポイントは$$ D^{-1} $$が正演算に戻るだけで、$$ E_a^{-1} $$$$ E_a $$に関しては変わりが無い。

$$ D+a $$$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$

意味は、$$ E_a $$で指数変換してから、微分し、逆変換を掛ける、と読める。

演算子分解法による定数係数1階数線形常微分方程式の計算例 EditToHeaderToFooter

演算子分解表記により、定数係数1階数線形常微分方程式は以下のように計算できる:

$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

$$ Dy $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

式1:常微分演算子表記

$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

式2:定数係数1階線形常微分演算子表記

$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

式3:演算子分解

$$ y $$$$ = $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$$$ R $$

式4:逆演算子表記

$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^a $$$$ R $$$$ dx $$

式5:通常表記に復元

演算子分解法に基づく、定数係数1階線形常微分方程式の解釈 EditToHeaderToFooter

上記式3を式4に書き換える途中、先頭の$$ E_a^{-1} $$だけを逆演算子に書き換えると式3’が得られる:

$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

式2

$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$

式3’:$$ E_a^{-1} $$のみを逆演算子に書き換えた状態

式2と式3'を見比べれば、定数係数1階線形常微分方程式から次の意味が読める:

作用対象$$ y $$と作用結果$$ R $$に対する定数係数1階線形常微分演算$$ (D+a) $$は、
両方に指数変換演算$$ E_a $$を施してからの常微分演算$$ D $$と等価である。

このため、次の考え方に基づく解答も可能である。

$$ \ddd{y}{x} $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

$$ Dy $$$$ + $$$$ ay $$$$ = $$$$ R $$

式1:常微分演算子表記

$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$

式2:定数係数1階線形常微分演算子表記

$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ E_a $$$$ R $$

式3’:両辺に対する指数変換を経ての常微分演算に分解

$$ y $$$$ = $$$$ E_a^{-1} $$$$ D^{-1} $$$$ E_a $$$$ R $$

式4:逆演算子表記

$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^a $$$$ R $$$$ dx $$

式5:通常表記に復元

まとめ・つなぎ EditToHeaderToFooter

$$ D $$$$ = $$$$ \ddd{}{x} $$と置けば1階線形常微分方程式を$$ (D+a) $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$に書き換えるのは容易であろう。
その先、$$ (D+a)^{-1} $$$$ y $$$$ = $$$$ e^{-ax} $$$$ \int $$$$ e^{ax} $$$$ R $$$$ dx $$と答えを丸暗記するよりは、
恐らく、$$ E_a^{-1} $$$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ R $$と一旦分解してから個別に逆演算に直す方が理屈を付け易く、
さらに、$$ D $$$$ E_a $$$$ y $$$$ = $$$$ D $$$$ R $$と両辺の指数変換$$ E_a $$を経ての$$ D $$と覚える方が容易である。

$$ D+a $$に対し$$ E_a $$$$ D $$しか登場しなければ、$$ E_a^{-1} $$$$ E_a $$の順番を覚える必要が無くなる。
小さいことではあるが、片方に付くが他方に付かない「-1」などは、混乱の元でしか無い。

    数学 一覧 検索 最新 バックアップ リンク元   ヘルプ   最終更新のRSS