概要 EditToHeaderToFooter

論理包含、含意、内含は、歴史的には記号$$ \supset $$で表記される経緯がある。
他方、集合論でも集合の包含の表記にも記号$$ \supset $$が使われる。
ところが、命題$$ p $$$$ \supset $$$$ q $$に対し、$$ p $$$$ q $$に関連深い集合$$ P $$$$ Q $$を考えると$$ P $$$$ \subset $$$$ Q $$と真逆な向きになり、紛らわしいことが起こる。

以下では、その仕組みを簡単に纏める。
なお、混同を減らすため、紛らわしさを対比させる場合を除き、
原則として、論理包含は記号$$ \Rightarrow $$で、集合包含は記号$$ \supset $$で表記する。

命題と集合の対応付け EditToHeaderToFooter

一般に、命題$$ p(x) $$があると、その命題を条件とする集合$$ P $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \} $$と1対1で対応づけできる。
例えば、$$ p(x) $$が「$$ x $$が偶数」であれば、対応する命題$$ P $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ x $$が偶数$$ \} $$が必ず作れる。
この1対1の対応付けは集合の内包表記そのものに利用され、集合の要件としても要請される。

簡潔のため、以下ではこの対応関係を記号$$ \sim $$で表記する。

$$ p(x) $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \} $$

逆に、集合$$ P $$があると、要素の包含を表す命題$$ p(x) $$$$ = $$$$ x $$$$ \in $$$$ P $$が1対1で対応づけできる。
例えば、$$ P $$が偶数の集合ならば、対応する$$ p(x) $$$$ = $$$$ [ $$$$ x $$$$ \in $$$$ P $$$$ ] $$、すなわち「$$ x $$は偶数である」が必ず作れる。
一般に、$$ P $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ x $$$$ \in $$$$ P $$$$ \} $$は常に成り立つ。

$$ x $$$$ \in $$$$ P $$$$ \sim $$$$ P $$

真偽値に対応する集合 EditToHeaderToFooter

恒偽 EditToHeaderToFooter

$$ p(x) $$$$ = $$$$ F $$、すなわち、$$ p(x) $$$$ x $$に関わらず恒偽の場合、
対応する集合$$ P $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ F $$$$ \} $$は要素を1つも持たないので、空集合$$ \varnothing $$となる。
よって、恒偽は空集合に対応する。

$$ F $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ F $$$$ \} $$$$ = $$$$ \varnothing $$

恒真 EditToHeaderToFooter

$$ p(x) $$$$ = $$$$ T $$、すなわち、$$ p(x) $$$$ x $$に関わらず恒真の場合、
対応する集合$$ P $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ T $$$$ \} $$は全ての$$ x $$を要素として持つので、$$ P $$は全体集合$$ \overline\varnothing $$となる。
よって、恒真は全体集合に対応する。

$$ T $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ T $$$$ \} $$$$ = $$$$ \overline\varnothing $$

$$ x $$$$ \in $$$$ X $$で考えている場合、$$ X $$が全体集合になるので、$$ P $$$$ $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ T $$$$ \} $$$$ = $$$$ X $$が成り立つ。
対応式で書くと

$$ T $$$$ \sim $$$$ X $$

例えば、$$ x $$$$ \in $$$$ X $$で考えているため、$$ x $$$$ \in $$$$ X $$$$ = $$$$ T $$である。
これに関して命題と集合の対応付けとして$$ x $$$$ \in $$$$ X $$$$ \sim $$$$ X $$が自明的に成り立つのが容易に確認できる。

基本論理演算に対応する集合演算 EditToHeaderToFooter

論理否定 EditToHeaderToFooter

命題$$ r(x) $$$$ = $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$に対応する集合は$$ R $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \} $$と書ける。
一方で、内包表記で記述される条件を満たさない集合は補集合であるため、$$ R $$$$ = $$$$ \overline{P} $$と書ける。
よって、論理否定は補集合に対応する。

$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \} $$$$ = $$$$ \overline{\{\, x \,|\, p(x) \,\}} $$

例えば、真偽値に関して、次の計算が容易に確認できる。

$$ T $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ T $$$$ \} $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ \lnot $$$$ F $$$$ \} $$$$ = $$$$ \overline{\{\, x \,|\, F \,\}} $$$$ = $$$$ \overline\varnothing $$

論理和 EditToHeaderToFooter

命題$$ r(x) $$$$ = $$$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$に対応する集合は$$ R $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$$$ \} $$と書ける。
一方で、集合としてみた場合、任意の$$ x $$$$ P $$$$ Q $$の片方にでも属せば集合$$ R $$の要素となるため、$$ R $$$$ = $$$$ P $$$$ \cup $$$$ Q $$と書ける。
よって、論理和は和集合に対応する。

$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$$$ \} $$$$ = $$$$ P $$$$ \cup $$$$ Q $$

論理積 EditToHeaderToFooter

命題$$ r(x) $$$$ = $$$$ p(x) $$$$ \land $$$$ q(x) $$に対応する集合は$$ R $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \land $$$$ q(x) $$$$ \} $$と書ける。
一方で、集合としてみた場合、任意の$$ x $$$$ P $$$$ Q $$の両方に属して初めて集合$$ R $$の要素となるため、$$ R $$$$ = $$$$ P $$$$ \cap $$$$ Q $$と書ける。
よって、論理積は積集合に対応する。

$$ p(x) $$$$ \land $$$$ q(x) $$$$ \sim $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \land $$$$ q(x) $$$$ \} $$$$ = $$$$ P $$$$ \cap $$$$ Q $$

論理包含と部分集合 EditToHeaderToFooter

命題$$ r(x) $$$$ = $$$$ [ $$$$ p(x) $$$$ \Rightarrow $$$$ q(x) $$$$ ] $$の集合表記を考える。
論理包含は論理否定と論理和を使って、$$ p(x) $$$$ \Rightarrow $$$$ q(x) $$$$ = $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$と書ける
そのため、$$ r(x) $$に対応する集合$$ R $$は以下に計算できる。

$$ r(x) $$$$ \sim $$$$ R $$

$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ p(x) $$$$ \Rightarrow $$$$ q(x) $$$$ \} $$$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \lor $$$$ q(x) $$$$ \} $$

$$ = $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ \lnot $$$$ p(x) $$$$ \} $$$$ \cup $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ q(x) $$$$ \} $$$$ = $$$$ \overline{\{\, x \,|\, p(x) \,\}} $$$$ \cup $$$$ \{ $$$$ x $$$$ | $$$$ q(x) $$$$ \} $$

$$ = $$$$ \overline{P} $$$$ \cup $$$$ Q $$

これに端的に表す専用の集合演算記号は、一般的には用意されてない。

そこで、$$ r(x) $$が恒真のとき、$$ P $$$$ Q $$の関係について考える。
$$ r(x) $$$$ = $$$$ T $$$$ \sim $$$$ \overline\varnothing $$より、$$ R $$$$ = $$$$ \overline{P} $$$$ \cup $$$$ Q $$$$ = $$$$ \overline\varnothing $$となる。
両辺の補集合を取ると、$$ P $$$$ \cap $$$$ \overline{Q} $$$$ = $$$$ \varnothing $$が言える。
これは、$$ Q $$の外側に$$ P $$の要素が存在しない意味であるため、$$ P $$$$ Q $$に集合的に包含される関係になる。

$$ p(x) $$$$ \Rightarrow $$$$ q(x) $$$$ \quad $$$$ \Leftrightarrow $$$$ \quad $$$$ P $$$$ \subseteq $$$$ Q $$

もし、論理包含の記号を$$ \Rightarrow $$の代わりに$$ \supset $$を用いた場合、
論理式と集合式で$$ \supset $$$$ \subset $$の両方が出て、紛らわしい見た目になってしまう。

$$ p(x) $$$$ \supset $$$$ q(x) $$$$ \quad $$$$ \Leftrightarrow $$$$ \quad $$$$ P $$$$ \subseteq $$$$ Q $$

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