大学では、2次元、3次元と$$ n $$次元ベクトルが色んな講義で登場し、繰り返して教えられる。
しかし、基礎であるはずの1次元ベクトルは意外に扱われない。
1も分からないのに、2と3が分かる方が不思議である。

勿論、1次元のベクトルはスカラで、高校まで完璧に勉強している、などと期待してはならない。
高校ではベクトルの半分しか学べない。
成分と基底が揃ってベクトルになるだが、基底の初登場は大学である。

こうして、高校と大学のギャップに嵌まる学生が量産される。

凌宮数学では、このギャップを埋めるため、小学校で学ぶ数直線から出発する。
数直線は1次元の直線座標系にあたり、解析幾何の原点とも言える。
これでやっと、小学校から大学までの知識を繋げられる。

数直線=1次元の座標系

$$ x $$座標系

図1は$$ x $$座標系を描いた図である。
少し具体的に言うと、緑色の矢印と刻み、数字の部分が座標系である。

図1: $$ x $$座標系
x座標系.png

左から右に向かう緑の矢印が座標軸である。この例では「$$ x $$軸」という名前を付けている。
$$ x $$軸上の刻みが座標であり、近くにある数字が座標値である*1
例えば、青線の左端の$$ 0 $$、右端が$$ 2 $$である。

また、任意の座標を表すとき、軸と同じ文字を使う習慣がある。
高校までは数式に座標軸を書かないため、式の文字は全て座標値と考えて良い。
図1の例では、$$ x = 2 $$とあれば座標値の$$ 2 $$を意味し、$$ x $$軸が2本になったりしない。

*1 実際、座標値を「座標」で呼ばれる場合が多い。そもそも「座標」という言葉は、座標、座標値、座標系のどれにも使われるので注意が必要。

間隔の異なる2つの座標系

続けて、大学のベクトルに少しだけ近付けるため、軸が2本になった場合を考える。
ただし、これは高校までに学んだ2本の軸を直交させた2次元座標系ではなく、図2にある平行に描いた2つの1次元の座標系である。

図2:$$ x $$座標系と$$ u $$座標系
xu座標系.png

この2本の座標軸はそれぞれ$$ \iro[md]{x} $$軸と$$ \iro[mz]{u} $$軸と名付ける。
これに合わせて、座標系も$$ x $$座標系と$$ u $$座標系となり、任意の座標値を表す文字も$$ x $$$$ u $$になる。

青線の右端の座標値を見ると、$$ x $$軸では$$ \iro[md]{2} $$$$ u $$軸では$$ \iro[mz]{4} $$になっている。
同様に、任意の座標で、$$ x $$軸の値が丁度$$ u $$軸の値の半分になっているのが分かる。
この対応関係を式で書くと、$$ x = \ffd12 u $$となる。逆に書くとと$$ u = 2x $$になる。

この例から、座標を特定するには、座標系と座標値の両方を言う必要があることが分かる。
単に座標値が$$ 2 $$の座標と言っても、緑の$$ \iro[md]{2} $$と水色の$$ \iro[mz]{2} $$では場所が違う。
したがって、高校生が座標を正しく言うには、「$$ \iro[md]{x} $$軸での$$ \iro[md]{2} $$」という必要がある*2

ここで問題になるのは、座標軸を言葉で言えるが、式では書けないことである。
このため、「$$ \iro[md]{x} $$軸での$$ \iro[md]{x} $$$$ \iro[mz]{u} $$軸での$$ \iro[mz]{u} $$が同じ座標である」を等式で書けず、
座標軸間の変換では言葉で回りくどく考える羽目になる。

*2 実際、殆どの場合は座標系が1つしかないために言わなくて済む。しかし、頭の中で補完できない限り理解できたとは言えない。

座標とベクトルの対応

図2をベクトルの発想で書き換えると図3になる。比較用に、図2も合わせて再掲する。

(図2)$$ x $$座標系と$$ u $$座標系(参考用再掲)
xu座標系.png
図3:基底で書かれた$$ x $$座標系と$$ u $$座標系
xu基底系.png

座標とベクトルは似て非なるものであるため、言葉が全く異なっている。
表1は役割の対応関係を纏めた結果である。

表1: 座標とベクトルの対応関係
座標用語ベクトル用語
座標ベクトル
座標軸基底
座標値成分

座標軸は無限に長い矢印だったが、ベクトルでは基底と呼ばれる長さが有限な矢印に置き換わる。
基底の向きは座標の向き、基底の長さで座標の間隔を表していると考えて良い。
この他、成分は座標値にそのまま対応する。

高校では座標軸も任意の座標値も同じ文字($$ x $$$$ u $$)を使っていたが、
ベクトルでは基底も成分も同じ式に書き込むため、同じ記号は使えない。
一般に成分は$$ x $$のままに、基底には$$ \:e_x $$など別の記号を当てる*3

図2と図3の読み替えを纏めると、表2となる。

表2: 図2と図3の読み替え
座標ベクトル座標ベクトル任意座標任意ベクトル
$$ x $$軸での$$ \iro[md]{1} $$$$ \:e_x $$$$ x $$軸での$$ \iro[md]{2} $$$$ 2 \:e_x $$$$ x $$軸での$$ x $$$$ x \:e_x $$
$$ u $$軸での$$ \iro[mz]{1} $$$$ \:e_u $$$$ u $$軸での$$ \iro[mz]{4} $$$$ 4 \:e_u $$$$ u $$軸での$$ u $$$$ u \:e_u $$

基底は座標軸を表すと同時に、それぞれの軸での$$ 1 $$が表す座標に対応したベクトルでもある。
他の座標は、$$ 2 \:e_x $$$$ 4 \:e_u $$のように、成分と基底を掛け合わせて表す
同様に、任意の座標は、任意の座標値を基底に掛け表せた$$ x \:e_x $$$$ u \:e_u $$になる。

また、ベクトルでは座標系に依らない座標にベクトル記号を与えている。
図3の例では、青線の右端を表すベクトル$$ \:r $$がベクトル記号である。
$$ \:r $$$$ x $$$$ u $$も関係なく、$$ \:r $$である。

図3のベクトルを使えば「$$ \iro[md]{x} $$軸での$$ \iro[md]{x} $$$$ \iro[mz]{u} $$軸での$$ \iro[mz]{u} $$が同じ座標である」ということは、次のように書ける。

$$ r $$$$ = $$$$ x \:e_x $$$$ = $$$$ u \:e_u $$

座標関係の言葉に直訳すると「$$ \:r $$の座標は、$$ \iro[md]{x} $$軸での$$ x $$$$ \iro[mz]{u} $$軸での$$ u $$と同じ」になる。
ベクトルの言葉に直訳すると「ベクトル$$ \:r $$は、基底$$ \:e_x $$と成分$$ x $$の掛け合わせ、、基底$$ \:e_u $$と成分$$ u $$の掛け合わせと同じ」になる。

*3 基底の記号には幾つかの流派があるが、凌宮数学では軸との対応関係が分かりやすく、表現力の高い$$ \:e_x $$を用いる。

ベクトル、基底、成分の相互変換

$$ r $$$$ = $$$$ x \:e_x $$$$ = $$$$ u \:e_u $$について、これを以下のように式変形できる。

表3: ベクトル、基底、成分の相互変換式
 ベクトルを求める式基底を求める式成分を求める式
$$ x $$軸について$$ r $$$$ = $$$$ x \:e_x $$$$ \:e_x $$$$ = \ffd{\:r}{x} $$$$ x $$$$ = \ffd{\:r}{\:e_x} $$
$$ u $$軸について$$ r $$$$ = $$$$ u \:e_u $$$$ \:e_u $$$$ = \ffd{\:r}{u} $$$$ u $$$$ = \ffd{\:r}{\:e_u} $$

ベクトルを求める式は、大学の教科書であれば良く見かける。
これに対し、基底を求める式と成分を求める式は全く見当たらないはずである。
それは、1次元ベクトルが教えられないのと、2次元から姿が変ってしまうためである。

そもそも、ベクトルを求める式が小学校から学ぶような乗算で済むのも座標系が1次元で、座標軸が直線で、座標軸が等間隔とう厳しい条件が全て成り立つときに限る。
ベクトルを求める式だけが、乗算で無くなっても書き方は変えず、計算規則を変えて対応している。
書き方を変えないお陰で、乗算が成り立たない場合も公式の姿が変わらず、新しく覚える必要はない。

残念なことに、基底を求める式と成分を求める式は、書き方が統一されてない。
例えば、成分を求める式は、ありえないベクトルの割るベクトルになるのが容易に想像できる。
しかし、割り算でも書き方を変えなければ、公式の姿が変らず、多くの公式を覚えずに済む。

以上の理由により、凌宮数学ではの成分を求める式の姿を変えずに貫き続ける。
ただし、基底を求める式では、成分だけで基底を復元するには、スカラの成分が持つ情報が少ない過ぎるため、2次元以上では定義できない。

まとめ 【編集中】

filexu基底系.png 6323件 [詳細] filexu座標系.png 6335件 [詳細] filex座標系.png 6438件 [詳細]
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Last-modified: 2013.0914 (土) 1513.1500 (3877d)