凌宮読取術: |
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これは、歴史的に別々に発展した微分法と区分求積法を繋げた超重要定理の一部*1である。
また、現在のベクトル解析においては、重要な置換積分公式*2*3*4が全てこの公式の拡張と言える。
問題は、図形と密接に繋がっている公式にも関わらず、図による直観的な説明は見掛けない。
微分積分学の基本公式では、微分の結果に対して積分を行うため、
一般的に教えられる「微分は傾き、積分は面積」という考え方では両立せず、1枚の絵に纏まらない。
これに対し、凌宮数学では、線積分に基づき、積分の解釈を面積ではなく線長とし、
微分積分の基本公式を1枚の図に纏めて、微積関係を直観的に読み取る:
第1段階では、問題を簡単にするべく、1つの変数から始める。
今のは、他からの影響を一切受けない、自由な変数である。
まずは、軸と軸上に2点
と
がある場合を考える。
2点によってになる区間
*5が区切られる。
区間の長さは、2点の差
で与えられる。
つぎに、区間を
分割して、分割点を
から順に
、
…
と名付ける。
小さくなるが、と同様に、区間
の長さは端点の差分
で与えられる*6。
差分と呼ぶが、が数列っぽく、
が小さいというだけで、差
とは本質的に何も変わらない。
ポイントは、区間を単純に分割しているため、を繋ぎ合わせば必ず
に戻るという関係。
式1: |
続けて、分割数を無限に増やしてみる。
が
に近づくため、
は
に近づく。
このに近い微小量という意味を込めて
を
と表記し、
の微分*7と呼ぶ。
一方で、式1は分割数に無関係に成り立つため、無限に分割ても同様の式が成り立つ:
式2: |
最後に、左辺のは微小量
の総和であるため、
に書き換えできる*8
今はの下端が
、
の上端が
であるため、
は全て同じ意味である。
区間の端点で表せたため、範囲の指定に使っていたは今や不要となる*9:
式3: |
第2段階として、を想定した、従属変数
を考える。
従属変数も変数である以上、独立変数と同じように考えられる。
以下は、従属変数らしく縦軸で描くが、の纏めも兼ねて要点に絞る。
まずは、軸と2点
、
があれば、長さ
の区間
が1つ区切られる。
つぎに、を分割すれば、長さ
の区間が大量に作られ、繋げば
に戻る。
式4: |
続けて、無限に分割すれば、長さの区間が無限に作られ、繋げばやはり
に戻る。
式5: |
最後に、は、全て同じ意味であり、積分らしく〆て:
式6: |
纏めると、や
などの全微分は区間の無限分割、対する積分は微小区間の足し合わせ。
微分積分学の基本公式の1つ目の読み方は:
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第3段階として、と
の関係を考える。
ここに来て初めて2つの変数が出揃うので、横軸、縦軸
の見慣れた2次元グラフが登場する。
手口はこれまで同様、2点の場合、適当に分割した場合、無限に分割した場合を順に進める。
まずは、軸と2点
と
、直交する
軸と2点
、
について考える。
軸上に2点があれば、長さの区間
と長さ
の区間
が区切られる。
2つの差と
の関係を無理やり式で表すと*10*11*12:
式7: |
つぎに、を分割し、
の関係を保ちながら
も分割する。
対応する2つの差分と
に着目すると、式7の差と全く同じ関係が成り立つ:
式8: |
続けて、を無限に分割する。
と
が小さくなるだけで何も変わらないため、式8の差分と全く同じ関係が成り立つ:
式9: |
最後に、対応していることが分かれば良いので、添字を省けば:
式10: |
纏めると、や
などの全微分の乗算と除算は差分量に同じ。微分積分学の基本公式の2つ目の読み方は:
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これまで、「差」→「差分
」→「微分
」と区間を小さくする手順を繰り返してきた。
それぞれで得た式を並べば、区間を小さくしただけで、他は何も変わらないことは直観で分かる。
差と和 | 商と積 | 微分・積分の基本公式 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
差 | ![]() ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() | ![]() |
差分 | ![]() ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() | ![]() |
微分 | ![]() ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() | ![]() |
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また、微分積分学の基本公式の一般的な説明では「近似誤差」と「極限でに収束する概念」が必須である*13*14が、
上記の区間を狭める各過程において、差と和、商と積の式は常に厳密に一致していることに注意する必要がある。
これは差分商を上手く設定しているためで、通常の説明で用いられる微分ありきの差分商とは条件が異なっている。
これまで、微分積分の基本公式を直観的に理解するため、全微分と全積分に基づく一連の図を描いた。
これらの図では、差→差分→微分と変化させながら、基本公式を不変の関係として直観的に捉えられる。
微分積分の基本公式は、ベクトル解析の分野で大きな影響力を持っている。
この考え方は、線積分、面積分、体積分の間にある置換積分公式の図による直観的理解に繋ぐ。
微分積分の直観的理解のため、変数の微分とその積分
について考えた。
は全微分とも呼ばれ、偏微分など*15と呼ばれる微分とは異なる*16*17*18*19。
は被積分関数が
の積分として括られるが、凌宮数学では微分に対応させ全積分と呼び分ける。
系統名(仮案) | 全微分 | 偏微分 | 全積分 | 偏積分 | |
---|---|---|---|---|---|
変数の微分 | 関数の微分 | 変数の積分 | 関数の積分 | ||
慣用名 | 略称 | 微分 | 微分 | 積分 | |
1変数 | 全微分 | 常微分 | 定積分 | ||
多変数 | 偏微分 | 線積分 | |||
表記例 | ![]() ![]() | ![]() | ![]() ![]() | ![]() |
全微分は特定の変数だけの微小量であり、全積分はその逆演算として、微小量の総和である差を表す。
偏微分は関数と変数の関係であり、偏積分はその逆演算として、やはり関数と変数の関係を表す。
また、偏微分は2つの全微分の商とも見なせて、この解釈では偏積分はとして2つの全微分の積と見なせる。
微分積分の基本公式では、
が導関数
と変数
の偏積分、
が変数
の全積分と見なせるため、
微分積分の基本公式は偏積分と全積分を結ぶ変換公式であるとも言える。
※ 日本語の「微分」も「全微分」も複数の概念を表している*20。
英語でも多少の揺れはあるが、の形の微分を「differential」と、
の形の微分を「derivative」と呼び分けている*21*22*23。
漢字を使う中国語でも結構の揺れはあるが、の形の微分を「微分」と、
の形の微分を「導数」と呼び分けている。
現時点で「全微分」と「偏微分」で微分・積分対象の有無の違いを表すのは不適切と認識している*24*25。
【追記】「全導関数」の用例*26が見つかった。「全導関数・偏導関数」vs「全微分・偏微分」の使い分けが既に存在するなら、そのまま使うのもアリかと。その場合、積分の方は「全原関数・偏原関数」vs「全積分・偏積分」と呼べば対応関係を表せる。
全微分自体をベクトルとして扱う視点で、微分の用語をベクトルの用語と照らし合わせて分類すると以下の表になる。
ここで、具体例は以下の場合について考える:
微分 | ベクトル | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
具体例 | 用語 | 具体例 | 用語 | |||||||||
![]() | 全微分 | 完全微分 | 微分 | ![]() | ベクトル | ベクトル | ||||||
![]() | 不完全微分 | ![]() | 成分 | ベクトル成分 | ||||||||
![]() | 偏微分 | 偏導関数 | 偏微分係数 | ![]() | スカラ成分 成分 | スカラ | ||||||
![]() | 微分 | 常微分 | 微分商 | 導関数 | 全導関数 | 微分係数 | ![]() | |||||
![]() | 勾配 | 全導関数 | 全微分係数 | |||||||||
![]() | 方向導関数 | 方向微分係数 |