ベクトル積分演算子 EditToHeaderToFooter

3次元空間でのベクトル積分と言えば、線積分$$ \inte[R] \b F \sx d\:r $$、面積分$$ \inte[S] \b F \sx d\:S $$、体積分$$ \inte[V] F \, d V $$。名前の「線」「面」「体」は伊達ではなく、ある種の次元とも言える積分の階数を表している。それは$$ d\:r $$$$ d\:S $$$$ dV $$を成分表示にすると良く分る。

線要素: $$ d\:r $$$$ \!\left[\begin{array}{c} dx \\ dy \\ dz \end{array}\right]\! $$

面要素: $$ d\:S $$$$ \!\left[\begin{array}{c} dydz \\ dzdx \\ dxdy \end{array}\right]\! $$

体要素: $$ d V $$$$ dxdydz $$

問題は、微分では2階微分が$$ \ddd{^2}{x^2} $$と表記するように$$ d $$の数は階数を表すが、$$ d\:S $$$$ dV $$の式では両辺の$$ d $$の数が異なっていて、一貫性に欠けている。これを回避するため、猫式では微小要素の記号に階数を記入する。

線要素: $$ d^1\:r $$$$ \!\left[\begin{array}{c} dx \\ dy \\ dz \end{array}\right]\! $$

面要素: $$ d^2\:S $$$$ \!\left[\begin{array}{c} dydz \\ dzdx \\ dxdy \end{array}\right]\! $$

体要素: $$ d^3 V $$$$ dxdydz $$

同様に、成分表示される面積分は$$ \inte\nte F dxdy $$のように書かれるため、$$ \int $$の数も階数と直結している。しかし、定積分では$$ \int_a^b $$のように書かれるため、面積分を$$ \int^2_S $$と書くのは都合悪い。猫式では従来表記との互換性を考慮して、$$ \int $$を範囲指定の専用記号として、階数指定の記号を別に作る。

スカラの場合、(常)微分と(不定)積分は互いに逆演算であり、次のような関係が成り立つ。

$$ F(x) $$$$ = $$$$ \ddd{f(x)}{x} $$$$ \;\Leftrightarrow\; $$$$ f(x) $$$$ = $$$$ \inte F(x)\,dx $$

そこで、分数の感覚で、$$ F(x) $$$$ = $$$$ \ddd{f(x)}{x} $$$$ f(x) $$について解くと、$$ f(x) $$$$ \ffd{F(x)\, dx}{d} $$のように書ける*1。このため、猫式では$$ \ffd{1}{d} $$で積分を表記する。また、この表記は積分と微分の相互関係に基づいているため、その関係が成立して当然のように見える。

これらを不定積分、定積分、線積分、面積分、体積分に適応した上、式変形が便利にするために許す書式を一覧すると次のようになる。

 不定積分定積分
線積分面積分体積分
通常表記$$ \int F\,dx $$$$ \inte[R] \:F \sx d\:r $$$$ \inte[S] \:F \sx d^2\:S $$$$ \inte[V] F\,d^3V $$
猫式表記分数形$$ \ffd{F\,dx}{d} $$$$ \inte[R] \ffd{\:F \sx d\:r}{d} $$$$ \inte[S] \ffd{\:F \sx d^2\:S}{d^2} $$$$ \inte[V] \ffd{F\,d^3V}{d^3} $$
演算子形$$ \ffd{dx}{d}F $$$$ \inte[R] \ffd{d\:r}{d} \sx \:F $$$$ \inte[S] \ffd{d^2\:S}{d^2} \sx \:F $$$$ \inte[V] \ffd{d^3V}{d^3}F $$
$$ d^-\!\!dx\,F $$$$ \inte[R] d^-\!\!d\:r \sx \:F $$$$ \inte[S] d^{-2}d^2\:S \sx \:F $$$$ \inte[V] d^{-3}d^3V\,F $$
互換形$$ d^- F\,dx $$$$ \inte[R] d^- \:F \sx d\:r $$$$ \inte[S] d^{-2} \:F \sx d^2\:S $$$$ \inte[V] d^{-3} F\,d^3V $$

分数形と演算子形はそれぞれ微分の分数形と演算子形に対応しており、互換形は通常の積分と似せた表記である。積分範囲を指定しない不定積分では$$ \int $$が登場しない。また、定積分から範囲指定を除いた部分をその定積分の不定積分と見なすことができる。

*1 $$ \inte F(x)\,dx $$では積分の「分」が不明だが、$$ \ffd{F(x)\, dx}{d} $$なら$$ F $$$$ dx $$の積に$$ d $$との分数、と冗談半分で言える。

まとめ・つなぎ EditToHeaderToFooter

微分と同様、積分でも階数は重要である。しかし、通常の表記は階数の表記に一貫性がない。このため、積分の階数を一貫して記述する表記法として、$$ d^2\:S $$$$ d^2\:V $$$$ \ffd{1}{d} $$を導入した。次回は、これらの表記法を階数が異なる積分を結ぶ置換積分公式に適用する。

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Last-modified: 2012.0229 (水) 1507.4300 (4440d)