加法定理

加法定理は、加減算の三角関数を分解する公式。便宜上、三角関数が$$ \csin $$$$ \ccos $$のどちらかで未定であることを$$ \ctri $$と表記すると*1、加法定理は次のように書ける:

$$ \spc{\ctri}{\exp}(\alpha \pm \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \spc{\ctri}{\!\exp}\alpha \, \spc{\ctri}{\exp}\beta $$

重要なのは$$ \sin $$$$ \cos $$は加算を乗算に変える能力を持っていること*2。そして、これが次の指数の法則と同じ形であること。

$$ \exp(\alpha + \beta) = \exp\alpha \, \exp\beta $$

$$ e^{\alpha + \beta} = e^\alpha \, e^\beta $$

等号ではないのは、符号や係数などが欠けているため。式の左辺がそれぞれ$$ \csin(\alpha + \beta) $$$$ \csin(\alpha - \beta) $$$$ \ccos(\alpha + \beta) $$$$ \ccos(\alpha - \beta) $$の場合について、等号が成立するように右辺を決めて行くのが組立の仕事。

*1 語源は三角を意味する英語 triangle の先頭で「三」を意味する三文字の語根 tri から。
*2 公式なんかより関数の性質を覚える方が遥かに重要

1. 正弦合わせ

組立は$$ \ctri $$の決定から始める。三角関数は三角公式の骨組みのようなもので、これが決まらないと何も決まらない。

猫式では、個々の項に対し、乗算している$$ \csin $$の数をその項の正弦数と定義する。加法定理の右辺にある$$ \ctri \alpha \, \ctri \beta $$には未定表記が2つあるため、組み合せは2×2=4通り。それぞれの正弦数は次のようになる:

$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$ ── 0個 ── 偶数
$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$ ── 1個 ── 奇数
$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$ ── 1個 ── 奇数
$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$ ── 2個 ── 偶数

そして、正弦数に関して組立術の真髄である次の規則が成り立つ:

正弦陰性則: $$ \csin $$が2つ掛け合わせる毎に、項の前に「$$ \iro[ak]- $$」が1つ増える

正弦奇偶則: 正弦数は、等式の各項を通して「全て奇数」または「全て偶数」

これらを適応すると、右辺はそれぞれ2組ずつ絞られる:

$$ \csin(\alpha + \beta) $$ ── 奇数 ── $$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \phantom-\! $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \csin(\alpha - \beta) $$ ── 奇数 ── $$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \phantom-\! $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha + \beta) $$ ── 偶数 ── $$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \iro[ak]-\! $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha - \beta) $$ ── 偶数 ── $$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \iro[ak]-\! $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$

等式にするため、2つの候補から1つの値を作ることになるが、ここは法定理ということで単純にえば良い*3。ここまでの作業で次の形になる:

$$ \csin(\alpha + \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ + $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \csin(\alpha - \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ + $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha + \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \iro[ak]- $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha - \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \iro[ak]- $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$

*3 和積公式でも同じ状況になるが、和は右辺がなので、加えない。

2. 符号合わせ

続けて、式に残る符号を決める。一般に、数式は上手くできるもので、「$$ + $$」が基本で、何かの理由があって初めて「$$ \iro[ak]- $$」が現れる。というわけで、左辺が加算の2式は「$$ + $$」が「$$ \iro[ak]- $$」に化ける理由が無いから、もう出来上がっている。

$$ \csin(\alpha + \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ + $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha + \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ - $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$

残りの2式は、左辺の$$ \beta $$が符号反転したがために、右辺でも符号反転する。しかし、次のように書いた場合、反転する符号は選ぶ余地が無いよう見えるが、

$$ \csin(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[ak]- $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[ak]+ $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$

2つの候補を逆に書いた場合、通常省略される$$ \clr[ao]+ $$が現われ、反転することになる$$ \clr[mr]+ $$が省略されるので困る。

$$ \csin(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \clr[ak]- $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$$$ \clr[ao]+ $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$
$$ \ccos(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \clr[mr]+ $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$$$ \clr[ao]+ $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$

このため、目に見える符号の反転ではなく、「項の符号反転」として全ての項について考える必要がある。

結果的に、右辺の$$ \beta $$$$ -\beta $$に置き換えて計算することになるが、$$ \ccos $$$$ \ccos(\iro[ak]- \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \ccos(\beta) $$と「$$ \iro[ak]- $$」を消すのに対し、$$ \csin $$$$ \csin(\iro[ak]- \beta) $$$$ \Rightarrow $$$$ \iro[ak]- \csin(\beta) $$と「$$ \iro[ak]- $$」を通す性質*4を使えば良い。

また、色で直感的に覚えても良い。正弦陰性則でも、「$$ \iro[ak]- $$」を伝搬する性質でも、$$ \csin(\beta) $$は「$$ \iro[ak]- $$」と相性が良い。$$ \csin $$と「$$ \iro[ak]- $$」を赤で統一しているのもこのためである。

以上の結果、加法定理の4式は次のようになる。

$$ \csin(\alpha + \beta) $$$$ = $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[ao]+ $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \csin(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ = $$$$ \csin \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[ak]- $$$$ \ccos \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha + \beta) $$$$ = $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[ak]- $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$
$$ \ccos(\alpha \mathbin{\clr[ak]-} \beta) $$$$ = $$$$ \ccos \alpha $$$$ \ccos \beta $$$$ \clr[mr]+ $$$$ \csin \alpha $$$$ \csin \beta $$

*4 専門用語では、$$ \ccos $$は偶関数、$$ \csin $$は奇関数。

3. 値域合わせ

本来なら、最後は値域をチェックする段取りだが、この場合、右辺の値域は簡単には分らない*5。幸いなことに、数式は上手くできるもので、簡単に分らないからチェックしなくても良い。既に上手くできているから。

*5 「簡単」というのは、加算(or減算)と乗算を1回ずつで出せることを意味し、専門用語では線形変換という。非線形になる途端に解けなくなる場合は結構あるので、こういうセンスも重要である。

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Last-modified: 2012.0229 (水) 1507.5300 (1999d)