これらのキーワードがハイライトされています:$1 基底成分表記ベクトルの成分表記には、列ベクトル、線形結合、総和規約があり、普通はこの順番で習う。列ベクトルは基底を省いた表記で、直観的で初心者に易しいため、最初に習う*1。その後、座標変換などを扱うとき、基底を省いた裏目で対応できず、ベクトルの基本表現である線形結合を覚えさせられる。続いて、線形結合は記述量が多くて大変なため、すぐに成分計算の頂点に立つ総和規約を叩き込まれる。しかし、総和規約の計算は添字計算の嵐で、機械的に計算が進むのは良いが、直観的ではなく、基底間の対応と成分間の対応と式の意味が確認しにくい。 これに対し、猫式ではベクトルをと表記。列ベクトルのように基底と成分の両方を並べ、縦線で分離。基底と成分の位置さえ対応していれば、のような不規則な並びも許す*2。 混合基底一般に、線積分はとなるが、基底成分表記ではになる。 通常、基底と言えば、、を指すが、微分形式では、、、を基底と見なしてベクトル演算を行う。このため、ベクトル積分には2種類の基底が混在していることになる。猫式では、区別のため、通常空間の広がりを表す、、を通常基底またはマクロ基底と、微小空間の広がりを表す、、を微小基底またはミクロ基底と呼び分ける。対応して、、、のように、通常基底のみ、微小基底のみ、両方の基底を含むベクトルをそれぞれ、通常ベクトル、微小ベクトル、混合ベクトルと呼ぶ。 また、混合ベクトルの一般型として、のように表現する。3つ区切りは基底毎の位取り表記、2つ区切りは基底側に書く基底に対するハイライト表記、区切り無しは基底と成分を気にせずに項を並べただけの表記。 ベクトルの積混合基底の演算もベクトル同様に、通常ベクトル演算、 微小ベクトル演算、混合ベクトル演算と分類できる。実際、ベクトル置換積分で登場するのは3種類の通常ベクトル演算と3種類の微小ベクトル演算のみで、混合ベクトル演算は出番無し。その6種類の演算は以下の通り。
一般的に、通常基底にもを適用できる。むしろ、通常ベクトルの倍積、外積、内積を先にで纏めてから微分形式に応用するのが正統である。しかし、この手順ではが通常基底と微分基底の両方に使われるため、混同が起こる。実際、ベクトル解析学の授業では微分形式を使わないし、微分形式の授業では通常ベクトルの計算が常に展開されてる状態にしていて、混合ベクトルを上手く回避している。しかし、これでは科目間に深い溝が出来てしまい、理解の妨げとなる。 そこで、微小基底のと区別するべく、猫式では通常ベクトルに適用するをと表記する。これより、通常ベクトルに関する外積演算は以下となる。
2次形式と3次形式の基底が少し変わっているが、こっちの方が厳密的であるだけで、今は余り気にせずに通常ベクトル基底の2種類の表現を等価と思って構わない*3。 成分基底表記によるストークスの定理の計算ストークスの定理は、猫式の基底成分表記とベクトル積分演算子で表記すると次のようになる。ただ、3次元を扱う限り、倍積、外積、内積の方が敷居が低いため、まだを使わないでおく。 左辺
簡略表記上の計算途中で、とあるが、注釈にもあるように、微小基底があるために通常基底の内積を取っても3つの項が混ざることはなく、このような割り込みが可能となる。このように、任意のベクトルに対し、通常基底*4を割り込ませ、基底のベクトルと成分のベクトルの内積の形に分解できる。これを利用してと定義すれば、通常ベクトルの内積と基底成分表記が簡単に行き来できる。 これより、微小ベクトルの3種類の演算は次のように書ける。
この簡略表記により、ストークスの定理とガウスの定理は次のように変形できる。 まとめ・つなぎ今回は、微分形式を経由して、積分公式を導きいた。ベクトル形の積分公式と微分形式を橋渡しするため独自の表記を用いたが、個々の手順自体は合法的。やってることは、、と微小要素を分解してから、単位で消している。これと同じことを、前回は、の形でやっていた。直観的には、今回はのように回りくどく因数分解してから約分しているのに対し、前回はのように直接割ってる。 また、導入したイカサマ外積も基底側を作るためのものであった。このため、イカサマ外積は必然的に成立していて、必要な演算と言える。というわけで、次回は基底側の計算について考えてみる。
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